醸蒸多知日記・プロローグ(2・8 長文だよ(^^;)


 旦那曰く「夜逃げするような大荷物」を車に積み込み、能代に向かう。 かむたちさんのところに寄り、夕方まで時間をつぶす。 その間にばんぶと沙奈とチャットしてたら、これからの 私の修行の激励をするかの如く、ちょうど喜久水に向かわなければ、 という時間帯に彼らもかむたちさん宅に到着した。 注:かむたち=初代醸蒸多知
みんなで喜久水に向かい、杜氏さんに久々のご対面。 杜氏さんが最初に言った科白が
「あぁ、やっと思い出しました(^^;」

・・・まぁ、杜氏さんが覚えていないのも無理はないな。 (秋田の利き酒会で最高に酔っていらっしゃる時にお会いしたので)

ばんぶはともかく、沙奈とばんぶのお連れさんは「初の酒造」とあって かむたちさんが一通り蔵を案内。その時にすでに私は杜氏さんから 着せていただいた法被で、気恥ずかしいやら、誇らしいやら・・・

 私の食事が用意されているとあって、午後五時にはかむたちさんたちと 別れて六代目の自宅食堂に向かう。注:六代目=喜三郎
この時、「みんな一緒の釜の飯を食う」といった六代目の主旨が やっとわかった気がしたが、いきなり杜氏さんや蔵人さんたちと 一緒の食事でちょっとびっくり、ちょっと緊張した。
・・・まぁ、なんといいましょうか。「邪魔しにきて」いるのに なんて豪華な食事なんだろうと思いつつ、ぜんぶ平らげてしまった(^^; いきなり「一合熱燗」が準備されていて、
「これは歓迎のお酒なんだろうか?」とちょっとうれしかったが、 この「晩酌酒付き夕食」がまさか毎晩続くとはその時はまだ思わなかった。 他に「醸蒸多知」さんが2名(男性)いらっしゃり、その人たちも 今日から修行始めだという。

 食事中に六代目も登場。
さっそく私をみなさんに紹介してくれた。(^^)
その後、2名の醸蒸多知さんと私ともたもた食事をしているテーブルに 六代目が「でん」と置いた「亀の舞 神龍」。(゚-゚)ニヤリ
「歓迎のお酒だ!呑もう!!」
と、六代目も同じテーブルに座り、4人で「神龍」一升空けた頃、 「べらぼうで外国を味わおう」という話になり、いきなり二次会に 繰り出した。
注:べらぼう=飲み屋
「べらぼう」で一時を初めて呑んだ。
感想は・・・・「・・・・うふ♪」ということにしておいて(^^; 六代目もみんなも酔っぱらって帰って来て、かむたちさんに 一応報告の電話をしたら
「今、ばんぶとべらぼうにいるから杜氏に話して許可もらえたらおいで」 と言われたので、早速杜氏さんに許可を貰いに行った。
「あぁ、大金さんとだったらいいんじゃない?」という二つ返事の 許可を貰って、いざ「べらぼう」にリターンマッチ。

 その時はすでに私は最好調で、眠りはしなかったものの(^^;
みんなに「おいおい、明日大丈夫かよ」とえらく心配された(^^;;;
 帰宅した時間はかろうじて午前様にならない程度だったが 「本当に明日、午前六時に起きれるのか・・・(__;」と 酔った頭で考えながら眠りについた。

続く

「ただ今、元気に修行中!ご安心ください(爆笑)」 ミカ より


醸蒸多知日記・初日の朝(2・9)

 がばっと目が覚めたら朝の六時であった。
なんとか起きられてよかったなぁと思いつつ、休憩所に向かう。
「さぁ、行きましょうか!」という杜氏さんのかけ声とともに
私の一週間の醸蒸多知修行が始まった。

 最初にやった仕事は「櫂こぎ」と呼ばれる作業である。
「これのガス抜きをして」と渡された櫂をもっていったタンクはなんと 「田身」であった。
 思わず顔をほころばせながらガス抜きをしていく。
ただし、もろみは重くてタンクは大きく(当たり前だが)タンク一つで へばってしまった。
更に「こっちもかき混ぜるから」と行った向かいにあるタンクも田身で、 三段仕込みの「添」と呼ばれる段階までいっているものもかき混ぜた。
後、蔵の全部のタンクに入っている酒の温度調査をやり、 「ガスは危険だから吸い込むなよ」とさんざん注意されたにも関わらず 思いっきり吸い込んでは「うっ」となりながら何とか終えた。
 発酵ガスは本当にラリってしまうのではないか、というくらい きつく(かといって酔っぱらうような匂いではない)
ガスを吸い込んでふらっとしたところでタンクに落ちるとそのまま 昇天、ということもあり得るらしい。

一瞬、「田身だったら・・・(゚-゚)ニヤリ」と思ってしまった。
(冗談ですが。(^^;;)

 後始末の洗い物を終えた頃、朝食の時間となった。
朝食は午前七時半からだが、それまでの一時間の作業は本当にあっと言う間 であった。

続く
「ほとんどリアルタイムなので長文失礼!!」 ミカ より


醸蒸多知日記・初日の午前中(2・9)

 本当に、本当に美味しく朝御飯をいただいた後、休憩所で一服してから 午前中の作業が始まった。

「甑」に米を順番に入れ、蒸し、蒸された米を各部署に振り分け、 作業しながら明日の準備をし、蔵のタンクや麹の様子を見る、というのが 毎日の作業になる。

 その最初の作業、「甑に米を入れる」作業をまずは手伝った。
といっても初めての作業なので、私はただ見ていて使い終わったむしろや 米の入っていたバケツを洗うくらいしかできなかった。(;_;)
(まぁ、変に手を出しても邪魔するだけだし)
甑が大きいので、また米の量もハンパではなく(当たり前だ)
大きなバケツから米をベルトコンベアーに移す作業も見ていてでも 容易ではなさそう。「いずれこれもやるんだろうなぁ」と思いながら 見ていた。

 この作業が終わって、なんと「十時の一服タイム」に入る。
理由は簡単。米が蒸すまで作業がない、のである。
米が蒸し上がるまで40分ほど休憩所でTVを見ながら雑談に花が咲く。
蒸し上がった頃を見計らい、みんな一斉に作業開始。
その素早いこと、見ていて壮観だったというか、気迫を感じるというか、 さっきまで余談で笑い合っていた人と同一人物とは思えない見事な 職人魂。
「酒造りはチームワーク」というのをあらためて見せつけられた。
 大きな甑に蒸された今日は4種類の米を、 暖かいままむしろに包んで「こうじ室」と呼ばれる部屋に持っていき、 小さい仕込みタンクに運び、「酒母室」と呼ばれる部屋のタンクに運び、 エアーシューターで蔵のタンクの仕込みのまだ終わっていない「田身」に 放り込んだ。

私は主に「運び」と蔵のタンクでのかき混ぜをやった。

 エアーシューターからさっむ〜い風に飛ばされてやってくる米を 櫂で呼吸を合わせながら3人でかき混ぜる。
さっきまで「こぎ」が楽だったのが米送りが終わる頃にはだいぶ重たく、 最後には「こぐ」のが精一杯であった。

米を全部運び終えてから各々の清掃、洗浄をし終わった頃お昼になった。
続く
「寒くてあったかくて風邪ひきそうで心配だ」 ミカ より

醸蒸多知日記・初日 午後の作業(2・9)

 お昼ご飯を食べた後、最初にする作業が「米の限定給水」 特別な米(亀の尾、華吹雪、山田錦など)は手でといで杜氏さんの 勘で時間を測りながら給水する。
 どこにでもある目覚ましを持ち、杜氏さんの合図に合わせて 米をとぎ、水を含ませ、水を切る。
今日給水した米は「亀の尾 33%」であった。
丸いビーズのような白い米が水を含んで縦に線が入り、かといって割れる ことなくどんどん給水し終わっていく。

 あっという間の時間だと思ったが、作業が終わって時計を見ると 結構な時間が経っていた。
なんせすべてが珍しく、すべてが興味深いし、慣れてもいない(^^;ので 時間があっという間に経っていく。

 その後に蔵のタンクの温度調節の為の冷却器を入れる作業をした。
もちろん私はほんの少し手伝っただけだが。(^^;;;

なにより感心したのが徹底した「きれい好き」
当たり前といわれればそのとおりだが、使ったらすぐ洗浄して熱湯で 殺菌する。
 麹が混ざってしまうと大変なことになる、と蔵の担当さんが教えてくれた。 確かに、別の麹が混ざってしまうといい酒になればいいが、とんでもない 酒になってしまうことが圧倒的に多いだろうから、
酒造りは神経を使っても使っても足りないくらい使うんだなぁと 思った。

その後は明日の準備と洗い物で終わってしまった。

 晩御飯を食べた後、他の醸蒸多知さんと飲みに夜の能代に繰り出した。 帰ってきたら六代目の自宅の鍵が閉まっていて、閉め出しくらったぁ!! とおろおろしていたら奥様が鍵を開けてくれて一安心して床についた。
続く
「今夜も絶好調よ♪」 ミカ より

醸蒸多知日記・二日目 (2・10)

 なんとか今朝もちゃんと遅刻せずに起き、朝御飯前の作業にいそしむ。
 私の「醸蒸多知修行」の流れとしては(歴代の醸蒸多知さんたちはまた別 だろうけど)
 蔵で「櫂こぎ」「温度調査」朝御飯を食べてから「甑の米移動の手伝い」 「カスベをタンクに移す作業」一服タイムの後、
「蒸し上がった米を各部署に移動」昼御飯を食べてから 「米の特別吸水」一服タイムしてから
「蔵で温度調整の手伝い」で、晩御飯を食べて終わる、 といった毎日いたって同じような作業をする。
休憩時間が多くて楽そうに見えるが、それだけ集中して気を張って 作業するため、私たち醸蒸多知もそれを気配り、邪魔しないように するのに精一杯である。
このサイクルに慣れた、と思った時点で終了とは・・・ 「醸蒸多知修了証」をもらった後でも「また修行したい!」と 思う気持ちがわかるような気がした。

 ただし、今の時期は「吟醸クラスの仕込み」が入っているためか、 この作業も結構変則的になることが多い。
蔵人さん達も本当は私たちにかまっている暇なんかないはずなのに、 気を使ってくれているのがわかる。(^^;;;

 今日は「甑に米をうつす」という作業の手伝いをした。
バケツに入った米をコップ型をしたスコップでベルトコンベアーに 運び移すものだが、これがなかなか重いし、難しかった。
それをやっている最中に、事務所の人がきて写真を撮っていった。
歴代醸蒸多知は全員作業中の写真を撮り、休憩所の前の棚に飾られる。 もちろん、「初代」かむたちさんや、「27代目」けえたの写真もある。 ここに私も飾られるんだなぁ、と思うと少し恥ずかしいけど・・・(^^;

「米を各部署に分ける」作業は「田身」の「留」といわれる 酒の三段仕込みの最後の米入れをした。
櫂をこぐのを手伝ったのだが、昨日より更に重たく、情けないことに 途中でベテランさんに変わって貰ってしまった。(ーー;;;
 その後、蔵のタンクのふちにつく「泡」を取り除く作業をした。 ふちといっても厳密には「もろみのふち」なので竹の定規みたいな棒で 頭をタンクにつっこみながらの作業であった。
またガスを吸って「うっ」となりながらも無事に作業を終える。

 昨日仕込んだ冷却器を外し、洗い、もたもたしている内に今日も終わって しまった。(^^;;

明日はもっときびきび動け・・・たらいいなぁと思う。(^^;;

続く 「田身ちゃんは今日も元気でした。」 ミカ より

醸蒸多知日記・3日目(2・11)

 今日はなんだかあわただしい。
 新しい酒の仕込みが始まったからだ。
特別室に設けられた「サーマルタンク」に次々と、慎重に水と麹と米が 混ぜられる。
どういう酒になるかはわからないが、みんな一生懸命に造っている酒だから きっと美味しいに違いない(゚-゚)ニヤリとしてみる。

 当然蔵の中はますます忙しくなり私たちは手持ちぶたさになってしまった。 ヘンに手を出しても仕方ないので、蔵をうろついては各自手がけた酒を 覗いてはいろいろ雑談していた。(^^;
といっても遊んでいるわけでなく、洗い物があったら即座に洗ったり、 雑用をいろいろしていた。
まぁ、雑用もお手伝いのうち、と自分をなぐさめてみたりして・・・

 今日は夕方から初めて「麹室(こうじむろ)」と呼ばれる場所に行った。 麹は暖かいところで造られるために、室の中はサウナ状態。 室温は22度とそんなでもないが、そこで麹米をもみ上げたり、移動したり するととたんに汗がふきだしてくる。
男の人たち(当然女は私だけだが)はみんな上半身裸で作業している。 私はできることしかしなかったが(雑用(^^;)米をもんだりする作業の 手伝いをすると多分、シャツを着てなんかできやしないだろうと思った。 (どういう格好したらいいのかしらねぇ)

 今夜は醸蒸多知3人衆で、晩御飯の後の酒を呑んでいたら六代目が来て、 「呑んでみるか?」と出された酒を呑んだ。
(銘柄はなーいしょー(゚-゚)ニヤリ)
最高に旨かった!!とだけいっておきましょう。

六代目の趣味の話と経済哲学の話なぞしながら夜はふけていった。

続く
「どうも田身ちゃんは"エリーゼのために"が好きらしい」 ミカ より

醸蒸多知日記・4日目(2・12)
 今日もいくつかの仕込みが始まるらしい。

ここまでに得た知識というのは基礎を知らない私にはまるで わからず、他の2人の醸蒸多知さんの知識には到底及ばない。(;_;) しかし、酒造りの気迫が実感できるし、酒がどうやって出来るか、という 行程を見に来た私としては、知識よりは十二分に意義のある修行である。 残念ながら、他の2人のレベルに合わせて蔵人のみなさんは教えて下さる ので、私は話の雰囲気から意味を読みとるのに必死。
でも、今日は日中はそんなに忙しくなく、杜氏さんの配慮もあって やっとわからないことのいくつかを聞き出すことが出来た。

「今、忙しいからなにも教えてやれねぇもんなぁ」という杜氏さんの 言葉に「いえいえ、忙しいときに邪魔しに来たようなものなのに・・・」 と心からそう思い、言った。
事実、みなさんすごく気を使ってくれ、かえって申し訳ないくらい。
杜氏さんはとても親切、丁寧に教えてくれた。
 今日は六代目が米の振り分け作業の場に来て、醸蒸多知さんたちの 写真をデジカメに撮っていた。
昨日、六代目が「インターネットに醸蒸多知さんの写真をのせているんだ」 といっていたのを思いだし、こちらに向けるデジカメに3人とも 緊張気味であった。
私はといえば、なんだか照れくさくて(゚-゚)ニヤリとだらけた写真しか 撮れなかったであろうから、インターネットをやっているみなさんはどうか見ない で下さい
(^^;;;

「サーマルタンクのこの酒は新しい試みの酒なんだよ」と話す 六代目に「呑むのがすごく楽しみですねぇ(^^)」などと話しながら それでも時間に追われて次々に変わる作業にいそしむ。
 今日は醸蒸多知の一人が本業の都合で帰宅し、午後から2人の 醸蒸多知になってしまった。
「米の特別吸水」の時に、杜氏さんが「いやぁ、最初は3人も 醸蒸多知さんが来て、仕事あるかなぁと思っていたども、 これ(特別吸水はすべて手作業、かつ、重労働(^^;)があるから かえって助かったなぁ」と言ってくれて正直少しでも役に立てたなら、と うれしく感じた。

 晩御飯の後に、杜氏さんと私ともう一人の醸蒸多知さんとで少し 話をした。
 去年の「吟醸酒を呑む会」で、私は高橋 良吉杜氏に初めてお会いしたが その会に参加したのは実はかむたちさんの陰謀だ、とか 酒は子供を作るのに似ているとか、いろいろ楽しく話しをした。 「子作りと酒造り」は私も同じだと思っている。

 なぜなら私が関わった最初の酒の「田身」は本当に可愛くて 何回も何回も暇があれば覗きに行き、とうとう蔵の担当さんに 「かわいいべぇ、會こぎしたもんなぁ」とからかわれている始末である。 もろみの表情が時間によって全然違うのもまた楽しいのだ。 これが感じたい、と思ったからこそ今回の修行に無理矢理参加したのだが それ以上のことを実践で教えてもらい、本当に来て良かったと思った。
続く
「田身ちゃんはまだまだ成長過程の真っ最中」 ミカ より

醸蒸多知日記・5日目(2・13)
 今日は朝から変則的なスケジュールになってしまったので、 なんだかなんにも働いていないような気がしている。
杜氏さんが毎朝やっているアルコール度の分析を見学していたら お客様が来てしまい、午前中は宙ぶらりんのまま終わってしまった。
 午後からは米(亀の尾33%)の特別吸水をやった。 これで最後の特別吸水になり、吟醸の仕込みは今日で全て終了した。 明日からはまた普通酒の仕込みに入るらしい。
 いつも手伝ってはいたものの、遠慮して入れなかった"元"(酒母室)に 初めて入り、"元"と呼ばれる酒の酒母の話を担当さんからいろいろ 教えてもらった。
今日は午後に旦那が心配して喜久水に登場。
六代目は出かけていたが、事務所でしばしの夫婦再会となった。(^^; なんだか旦那、いきいきしていたように見えたが・・・気のせい・・・ じゃあないよなぁ(;_;)
「帰ったらニードロップだぁ!!」と密かに心に誓いながらまた 作業に戻る。

 一升瓶の「火入れ」というものも初めて見た。
火入れというのは文字通り、熱で酒を殺菌消毒するものだが 実際どうやるかは知らなかった。
どうやるかといえばなんと、「湯煎」で温度を60℃にして殺菌消毒する のだ。素人目には「・・・熱燗??(^^;」と思ってしまうのも無理はない。 実際そのようなものだと思った。

 火入れの様子を見ながら、瓶詰めをする作業場(蔵とはまた別に作業場が あり、醸蒸多知修行とはあまり関係がない)で、甘酒を御馳走になった。 甘酒をあっためてくれている間にしっかり瓶洗いの手伝いをさせられたが、 これまた結構楽しかった。(^^)
情けないことに実は私は甘酒の作り方を知らなかったのだが、 甘酒を呑みながらいろいろ作り方を教えてもらい、勉強になった(^^)
 晩御飯で、「高橋 良吉」の新酒生酒が出た。 新酒といえども新酒らしからぬ味だとみんな言っていたが、これまた 情けないことに私はただただ「旨い!!」としかいいようがない(^^;
雌になってしまった。 これが本業だとまた辛い面もあるのだろうけど、よい経験を今しているし。(^^)
後2日だからと気をゆるませずに最後まで一生懸命やりたいと思っている。
続く
醸蒸多知日記・6日目(2・14)
 今日はなかなか仕事のほうが順調だった。 だいぶ慣れてきたのか、仕事があるとすぐにそっちに動き、 無ければ「洗い場の鬼」となり、仕事に詰まる、ということがやっと なくなった。が、明日で最終日。(;_;)
せっかく慣れたのに残念なこと限りなし。なにより「田身」ちゃんの 誕生まで一緒にいれないのがなによりも心残りである。 (すっかり醸蒸多知ナイズされてるあたり・・・(^^;)
 今日は「室」ではじめて麹を触った。
「酒母麹」と「添麹」「仲麹」を仕込んだのだが、
麹というのは、蒸した米を寝かせ、もみあげて30℃前後にしてさらに 寝かせて、次に40℃にして更に寝かせて・・・という熱と時間を経て 生まれる酒の「元」である。
そのうち、「添麹」と「仲麹」はなんとか基準の度数をクリアして 第2段階に入れたのだが、どうしても「酒母麹」の温度が上がらず、 結局、熱湯がはいった容器を麹の中に入れて温度を維持することになった。

 感じたことは蔵人さんたちが「これはダメだ、重症だ」と いいながら、何度も何度も温度を計る様があまりにも 「病気の子供を看病する親」の姿とオーバーラップし、 なにもできない私たち醸蒸多知も、いつしかその麹のそばに寄っていって 心配していた。

 本当に蔵人さんにとって酒は「子供同然なんだ」とあらためて思った。

明日は本当に珍しい「袋絞り」をする。
私の来たこの時期は確かに忙しいが、その分、普段では見学すらできないような事を 見ることが出来て「無理して来た甲斐があった」と喜んでいる。
 今日、お昼に六代目からとんでもない依頼を受けてしまった。(;_;) 六代目がしれっと「あぁ、今度秋田放送ラジオで醸蒸多知の取材を させてくれときたので、二人の電話番号、おしえといたから電話いくと思うよ」
・・・・・・おいおい(;_;)なんもしとらんのに・・・・・
続く
「これ以上有名人になったら悪いこと、できなぁい(;_;)」 ミカ より

醸蒸多知日記・最終日(2・15)
 いよいよ最終日になった。
ここに来るまで「醸蒸多知修行一週間は長いよなぁ」と思っていたが 実際来てみるともっともっといろんなことをお手伝いして、 酒造りに関わる人たちの表情をもっともっと知りたいと思った。
 これだけの短期間で素人をこんな気持ちにさせるほど、 蔵人さん達の結託は強いし、酒造りに対する心意気もりっぱだと思った。 酒造りの課程だけでなく、人間の絆の強さやみんなの酒に対する愛情などが 感じられたことが何よりの収穫であると思った。
 今日は午後から蔵の一般公開とあって、蔵の中は午前中はまさに「戦争」であった。 なんとか午前中に仕事を終えないと午後からお客さんなどが大勢くるので はっきり云ってしまうと仕事にならないからである。
おまけに「酒造り最大のお祭り」袋絞りがある。 これは聞くところによると、大吟醸の酒の品評会出品クラスの酒を搾る手段らしい。 滅多にやらないこの手法を今日は朝から手伝った。
タンクからもろみをいっぱいに詰めた袋を棒につるし、一滴一滴落ちてくる酒を 別の容器に受けるというものだ。
これにはさすがに杜氏さん他蔵人さんも神経を張りつめ、醸蒸多知達もただただ 邪魔しないように、なにか言いつけられたら動くということしかできなかった。
 十時の休憩の時にその酒の味を見させてもらった。
渋みは残るものの、後口がすっきりして大変美味しかった(^^)
「香りもいいし」とか「ちょっと酸味が」とみんな話していたが、私はこれでも 十二分に美味しいと思ったし、そういう行事(というかなんというか(^^;)の 時期に手伝えることができ、大変うれしく思った。

 午後から一般のお客様が訪れ、私たちも仕事がなくなり洗い場をうろうろしていたら 私たちも「この人たちが修行中の人たちで醸蒸多知といいます」などと説明された。 気分はもう、「檻の中のパンダ」である。(^^;
さらに私などは珍しい「女性修行者」なのでそれも一緒に説明されていたりして すごく照れくさく、「洗い物がなければ蔵のタンクの陰にでも逃げたい!」と 思ってしまった。(^^;;;

 終業時間のちょっと前に六代目と蔵人さんたちが休憩所の前に集合した。 「醸蒸多知修行修了証授与式」である。
六代目から渡された証書に少し照れながらも、正直をいってしまえば 「この修了証はもう少し先に頂いてもいいからもう少しこの仕事に携わりたい」 と思ってしまった。
 実際、一週間の修行時間は短い。「慣れた」と思った頃に終わりになる。 しかし、ただでさえ蔵人さんたちに気を使わせてしまっているのにこれ以上 迷惑をかけられないなぁ、と思ったのも事実であるので 「これはこれでいいんだ。」と自分に言い聞かせた。
さらに杜氏さんから「木箱の酒(らしきもの。うやうやしくてまだ中を見ていない)」 と六代目からの「分神」して頂いた「醸蒸多知の女神」の額縁をいただき、 さらにこの一週間、いくら眠くても着ると「ぴしっ」と気持ちが引き締まった シミのついた半纏もいただいて私の醸蒸多知修行は終わったのである。
 最後に「田身」ちゃんの様子を見に行き、甘酸っぱい「林檎」の香りを胸一杯に 吸い込み、ガスに「うっ」となりながら(学習能力がない私(^^;) しばしのお別れをした。
 帰りに杜氏さんにご挨拶し、半纏に杜氏さんのサインなんぞもらったくらいにして 「また遊びに来て下さい」とうれしい言葉をいただき、 休憩所にいた蔵人さんのみなさんに挨拶し、六代目や奥様にも挨拶した。 本当に感謝の気持ちでいっぱいだったし、いくらお礼の言葉をいってもいいたりない くらいだったが、「また遊びに来て」といってくれたみんなの気持ちを胸に 「喜久水酒造」を後にしたのである。
「修行外伝」に続く
「修了証を頂いたときに思わず涙がでそうになった(^^;」 ミカ より

"くびつり"と称する酒搾りの方法です。
正式にはさらしなどで作った袋の中にタンクのもろみを入れ、 宙づりにして、その重みでぽたぽたと落ちてくる酒の雫を集め、 一斗瓶に貯蔵し、更に"澱引き"という方法で一升瓶にいれたりするものです。 (ホントは「袋吊り」といいますが、見た目が似ていることから 蔵の人は「くびつり」といってるみたいです。)

この方法は、大吟醸クラス、それも品評会に出そうとする最高のものを 搾るときに行われるそうです。

 私が修行中の時もお手伝いしましたが、ホント、液体をしぼるものだから 時間を争う作業なんです。だから蔵の人たちもみんな集中します。 (実際、私も叱られたし(^_^ゞ)
がんばってお手伝いしてね。ほほほほほ。

袋は何回も何回も洗うのよ!!!p(^-^)qガンバッ

醸蒸多知 37代目 ミカ より
(いやぁ、いっちばん忙しい時期に行ったので詳しくなるなる(^^;)

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