がん対策情報2

1.がん告知法
  国立がんセンター東病院は 全国の医師に告知法の訓練を実施している。現在までに受講者は百人以上になってい  る。1999年度から国立病院の医師を対象に開始された。その内容の一部を抜粋して記す。
 基本技術は「身だしなみを整え、静かな部屋で、礼儀正しく」「患者の向き、目を見て話す」
 がんの告知では 医師の態度が患者の不安に影響する。「ちょっとしたテクニックで患者の受け止め方は全く違ってくる
 」と強調し、例えば 衝撃で口を閉ざす患者もよくいる。重苦しさに医師は先を急ぎがちだが 患者は気持ちを整理しよう としている。沈黙に耐えて 患者の本当の思いを話すまで待つことが大切だという。
  がん告知の際の注意点
 望ましいのは 1.正直に 明確に伝える 2.医師が推奨する治療法 3.質問を促し、その質問に答える 4.患者の感情の 表出を受け止める 5.家族を同席させる 6.家族にも患者同様配慮する
 望ましくないのは 1.はっきり伝えない 2.いらいらした様子で対応する 3.手や肩に触れる 4.電話で伝える 5.初対面
 で伝える 6.家族に先に伝える
 患者の意向を確認する事項として 1.伝えるタイミング(不確かでも早くか 確実な時だけか) 2.伝え方(淡々と伝えるか 深刻に伝えるか) 3.(段階的に伝えるか 結論を述べてから説明するか) 4.(断定的な口調で伝えるか 伝えないか)
 5.予後(知りたいか 知りたくないか)

  この告知法の訓練は 一般の病名告知にも参考になっていると感じます。

  がんが治癒しないと分かった時、残された時間を知り、自分の人生の後始末を達成するため、緩和ケアに切り替える
  ことも一つの選択だ。

 2.「放射線治療専門医の充実を」 がん治療の柱の一つである放射線治療の課題を話し合う「がんの放射線治療を応援  する市民集会」が3月21日、東京都内で開かれ、患者、医師ら約200名が参加した。切らずにがんを治す放射線治療   は米国ではがん患者の6割以上が受けているが 日本では十数万人で、がん患者の2割程度。その背景として 国内  の専門医が約500人と 米国の10分の1程度しかいないうえ 治療機器の管理など行う理工系専門家も約10人と極め  いて少ないことなどが報告された。スタッフの不足が治療計画の設定ミスや過剰照射などの事故につながっている と
  の指摘もあった。集会では専門医などスタッフの増員や育成を求める決議を採択。4月末をめどに10万人規模の署名   を集め、国に改善を要望していくことも決めた。署名用紙は「市民のためのがん治療の会」ホームページは
  http://www.com-info.org/  から入手できる。前立腺がんや子宮頸がんなどは放射線治療が有効であると東大病院  放射線科の中川恵一助教授は言う。コンピューター制御で病巣だけに当てるピンポイント照射や陽子線治療もある。   放射線治療は患者の負担が少なく、臓器や機能の温存を図れる。これまであまり顧みられなかった緩和医療や      QOL(生活の質)改善に使える。読売(2006.3.27夕刊).より転載。
   がん患者や放射線治療医らでつくる団体「がんの放射線治療を応援する市民集会」が2006.5/15、人材育成などを
  求めて、文部科学省に約 1万人分の署名を提出した。国内の放射線治療医は五百人程度で、米国の約五千人と比べ
  圧倒的に少ない。また、放射線治療の教授がいる大学も医学部を持つ八十大学中三十一大学で、放射線治療の講   義も少ない。放射線治療装置の品質管理を行う医学物理士も米国の約五千人に対して日本は実質十人程度で、
  普及が進まない原因となっている。同団体は先月、官房長官に約五万人の署名を提出。厚生労働省にも約二万人
  の署名提出する予定。署名を提出した中川恵一東大助教授は「人材不足から患者が治療法を選ぶ機会が失われて   いる。」としている。
 3.強度変調放射線治療(IMRT)は子宮ガンや前立腺がん、頭頚部がん、脳腫瘍など 手術に劣らない成績を上げている
  IMRTは米国で15年前に開発された。「原体照射」はビームをさまざまな角度から見える病巣の形に合わせて分割照射
  する。1回の線量が少なくとも病巣では重なり合い多くなる。それにより、周辺組織の線量は減らすことが出来る。これ
  1方向からの照射を更に病巣への正常組織の重なりを考慮、線量のモザイクのような濃淡を付ける。例えば前立腺が  んでは1日に1方向につき、30パターンを7方向から実施、照射回数は計210回に達し、15分ほどかかるという。更に細  かい照射を重ね合わせる原体照射の進化版、病巣1ミリ横では急激に被爆線量が減るようになる。病巣の形や位地、
  大きさなどと医師側の指示を基にコンピューターが最適の照射計画を算出する。
  国内治療実績では千葉県がんセンターと京都大病院が双璧。前立腺がんは1日2グレイの照射を2ヶ月かけて38回
  行うのが標準。現在まで再発は1例だけ(150例中)。IMRTは北大、東北大、近畿大か手掛けている。06.5.3.魁。
  永田靖広島大学病院放射線治療部教授(前京都大学病院放射線治療科准教授)は現在、IMRTの対象となるのは
  前立腺がん、頭頚部がんに限られ、京大病院では IMRTは最新のものを含めて 5台あり、1日 20人に照射。2000年
  にIMRTが導入されてからこれまで 約400人が治療。成績は通常の放射線治療に比べて、副作用が少なくなっている  。「前立腺がん患者の直腸からの出血は半減し、頭頚部がんでは口の渇きや喉の痛みが減るなど明らかに改善して   いる。」このIMRTは全国に 21施設(2008.1.4.現在) 京大病院の場合、治療費は約 77万円である。2008年4月より
  保険診療となる。米国ではがん患者の 60%以上に放射線治療が行われているが日本では約 25%と少ない。
 4.乳がんの最新治療法「集束超音波手術(FUS)」の臨床試験が「ブレストピアなんば病院(宮崎市、難波清理事長)」で
  世界に先駆けて進行中。FUSは MRI(磁気共鳴画像装置)を利用して、正確に患部に狙いをつけ、痛みもなく、体に
  傷つけずにがんを焼いて破壊してしまう。二百以上の発生装置から出る超音波を一点に集中させて、乳がんを焼いて   しまう方法である。FUS治療以後は手術と同様、放射線を多方向照射により完治させる。この40代の女性は直径
  約 9ミリの乳がんでしたがきれいに消失し、今後は放射線照射を受けることになる。2004年から 1年間の臨床試験
  では 29人で、FUSの安全性と効果は十分評価できるもので、これまで自費診療を含めて 78人がFUSを受けている。
 5.薬剤とレーザーを組み合わせた光線力学的治療(PDT)は子宮頸がん治療に有効。
  子宮頸がんの早期がんで、しかも出産を望む場合、子宮の入口を手術でくりぬく「円錐切除」が一般的ですが胎児を
  支える力が弱まるため、早産や流産の危険が高まり、不妊症になることもある。PDTを開発した杏雲堂病院(東京)
  の坂本優婦人科部長は「免疫物質を含んだ粘液を出す頸管腺の機能も保たれる。出血や痛みも殆どなく、輸血や
  麻酔も不要」と話す。PDTはがん細胞や前がん病変に蓄積する薬剤(フォトフリン)を静脈注射。2日後に病巣部に弱い
  レーザーを照射する。照射範囲は1cmの円形で、1箇所に6分間程度当てる。五輪マークを描くように重ねながら、
  病巣部分全体をカバー、治療時間は2時間程度。すると、薬が光化学反応して活性酸素を生み出し、がん細胞を壊す。  治療はは週2人のペースで、患者は全国から集まるため、現在は2箇月待ち状態。1989年以降、450例以上。1回の治  療でがんが完全に消えた患者は97%で、3箇月後の効果判定で取り残しが判明した3%は再度のPDTで対応。欠点は   光に反応する薬を投与するため、治療前に厳重な遮光管理が必要なこと。投与から4日間はローソク10本分の明るさ  に当たる10ルクスの薄暗い部屋で過ごし、テレビも厳禁、その後徐々に明るく出来るが3週間の入院が必要。病室の   外では黒い頭巾や手袋で顔や手を覆う。退院後も1,2ヶ月は光過敏症が出るため、日常生活に制約を受ける。PDT実  施施設はまだ全国で15箇所。レーザー照射装置1台が4,500万円。肺がん治療で最近、光過敏症が起きにくく、入院   が1週間程度で済む薬と1台800万円の照射装置が認可された。
 6.腫瘍内科医、日本にも誕生、1期生47名。
  化学療法は専門化が進み、白血病、乳がんなど、薬で治癒できるがんが増えた。薬の種類も増え、投与法も経口薬
  や長時間の持続点滴など多様化のため、不断の勉強が必要で、片手までは出来なくなった。制吐剤や白血球減少を
  抑えるG-CSFなどで副作用の予防と軽減が可能になった。また治癒が望めなくとも薬で、生活の質(QOL)を保ちつつ
  延命が可能になった。
  がん薬物療法専門医47名の所属病院
  東北大学病院(4名)、国立がんセンター東病院(千葉県)、国立がんセンター中央病院(東京都)、癌研有明病院(東京都   )、近畿大学医学部(大阪)、兵庫県立成人病センター、岡山大病院、国立病院機構山陽病院(山口)、国立病院機構
  九州がんセンター(福岡)、以上2名。以下は1名で、札幌医大、KKR斗南病院(北海道)、埼玉医大病院、千葉大病院、
  都立駒込病院、武蔵野赤十字病院、横浜労災病院、県立静岡がんセンター、県立がんセンター新潟病院、厚生連
  高岡病院(富山県)、国立病院機構名古屋医療センター、岐阜市民病院、大阪大学院、大阪医大病院、大阪府立
  呼吸器アレルギー医療センター、大阪市立総合医療センター、市立吹田市民病院、近畿大奈良病院、鳥取大病院
  岡山大保健環境センター、公立学校共済組合中国中央病院(広島県)、市立広島市民病院、広島赤十字.原爆病院
  九州大病院、福岡大病院、国立病院機構長崎医療センター、五島中央病院(長崎県)
 7.「がん対策基本法」(仮称)の要綱を与党がん対策プロジェクトチーム(座長鴨下一郎衆院議員)がまとめた。
  国や地方自治体の責務を明記し、専門医の育成の強化などを図る。
  また、がん診療連携拠点病院の整備や検診の質、受検率の向上も目指す。
 8.本県の乳がん検診状況

年 度 対象者 受検率 要精検率 がん発見率 がん発見率全国平均
13年度 257,722 24.8% 5.8% 0.07% 0.12%
14年度 254,816 24.9% 5.8% 0.06% 0.13%
15年度 242,146 25.9% 5.7% 0.08% 0.14%
16年度 223,128 24.2% 6.3% 0.08% -

 乳がんの本県の発見率が平成15年度で、全国最低である。国の方針により昨年(平成17年度)からマンモウグラフィー
 (乳房X線撮影装置)を併用する検診が始まった。秋田県は平成 15年度から 3年間でマンモウグラフィー搭載の検診車
  5台配備。日本乳がん学会専門医で、秋田乳腺クリニック(秋田市)の工藤保院長はマンモウグラフィー併用で、発見率
 は 3倍になると言われている。平成17年度から発見率は間違いなく上がっていると話している。乳がんは日本女性の
 がんの中で罹患率 1位の疾患で、本県の死亡者は年間80人台で推移している。魁2006.5.15.

 9.NBI(狭帯域光観察)内視鏡  早期がん発見に威力
  国立がんセンター東病院、消化器内科の佐野寧医長とオリンパスが共同開発した。6月発売される。
  NBI内視鏡は手元のボタンで、従来の内視鏡とNBI内視鏡に切替えられる。従来の内視鏡は白色光なのに対して、
  NBI内視鏡は青色に光る。大腸の陥凹型病変の内視鏡写真は従来の内視鏡では病変部ははっきりしないがNBI内視  鏡はくっきり浮き上がって写る。NBIの青色光は赤血球に最も吸収されやすい、中心波長が 415ナノメートルの青い光
  と 540ナノメートルの緑色光。しかもそれぞれに含まれる波長の範囲は 30ナノメートルと とても狭い。
  従来の内視鏡は疑わしい部分に吹き付けていた色素も不要で、組織採取もしなくともよく、患者の負担を軽くしている   威力を発揮するのは上部消化管で、咽頭がんや喉頭がん、早期食道がん、バレット食道。大腸は平坦型病変などの
  前がん病変の発見や悪性度診断などである。

 10.ウイルス療法 2013.9.10. テレビにて 報道された。東大医学部研究センターで 脳腫瘍の患者に腫瘍部分に直接
    ヘルペスウイルスに注射して ヘルペスウイルスががん細胞を殺しながら増殖することを利用している。これにより
    この患者は 腫瘍が消失して、退院した。ことを報道。ただこの療法は 遺伝子操作などするため 特効薬のない
    ウイルスが発生する可能性があるため 厳重な管理が必要である。

 11.自己リンパ球免疫療法(ANK) 本人のNatural Killer 細胞を培養して 10倍以上にして、本人へ点滴する。これにより
      本人のNatural Killer 細胞が がん細胞と闘い がん細胞を破壊させ、治療する。この方法は 本人のKiller 細胞
      によるため、副作用が少ない。QOL(生活の質)を保ながら治療が出来る。また手術で全身に散ったがん細胞も
      Killer 細胞が破壊してくれる。また分子標的薬ハーセプチンを併用できる。ただこの治療ができる病院は東日本
      では 東京にしかないので、東京に通院しなければならない。松本クリニック銀座Tel 03(3544)817

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