漢字、漢文について

         大修館書店発行、原田種成著「私の漢文講義」より抜粋しておく。
1.漢音、呉音、唐音について
 漢音、呉音、唐音についてについては 漢和辞典に記されてあるが その説明がないので ここに書いておく。
 呉音は 日本に伝存する漢字音で最も古い。4〜5世紀の六朝時代は政治、文化の中心は江南地方であり、そ の時の漢字音が呉音である。百済を通って入ってきたものが多く、特に仏語が多い。
 漢音は 6〜7世紀の隋、唐時代の漢字音、前漢の都があった長安付近の漢字音。漢字、漢文の「漢」と同じく  中国を指して呼んだ原点はここにあります。中国語の標準音である。
 唐音は 鎌倉(1,192年)、室町時代以後、中国の唐末から宋、元の時代の漢字音である。これを唐音(からおん)
 と呼んだ。また宋音とも呼んだ。次にその例を挙げておく。

   例   呉 音      漢 音     唐 音      現北京語   
   京  東京(きょう)  京(けい)城  南京(きん)   京j(jing じん)
   経  写経(きょう)   経(けい)済   看経(きん)   経(jing じん)
   明  光明(みょう)  明(めい)白  明(みん)朝   明(ming みん)
   東  東(とう)西    東(とう)西   広東(とん)   東(dong どん)
 
2.当用漢字について
  昭和24に告示された「当用漢字字体表」に活字体で表示されている。その解説書には 筆写体も正解と認め   ている。私の書く文字は筆写体が多い。筆写体というのは 書道で書く文字です。例を挙げておく。
  「木」というのは活字体で、筆写体は真ん中の縦棒は下ではねている。「言」の筆写体は一番上の横棒が
  書道の時は 点となる。二番目の長い横線の真ん中の上に縦の点を記入してもよい。「雪」の筆写体は 下か  ら二番目の横棒は右に突き抜けている。これが旧字でもある。「事」は 下から二番目の横棒は右に突き抜け  ているが これが突き抜けないのが筆写体である。
  もし中学校の漢字のテストで、筆写体で漢字を書いたら正解にしてくれるだろうか。

3.漢詩について
    古体詩ーー古詩(楽府を含む)ーー句数不定ーー五言古詩、七言古詩
                     五言絶句ーー偶数句の最後が押韻
           絶句ーー四句 七言絶句ーー偶数句の最後が押韻更に第一句も押韻
    近体詩             五言律詩
           律詩ーー八句  七言律詩
                 十句以上(俳詩)
4.平仄(ひょうそく)について
  漢字を 5世紀末の音により、平声、上声、去声、入声に分類し、所属させた。
  平(ひょう)音  平声ーー平らかで、高低のないもの
  仄(そく)音  上声、去声、入声  上声ーー語尾が高く尻上がりするもの  去声ーー語尾が尻下がりするも   の 入声ーー語尾を急につめる促音をいう。平声、上声、去声、入声は 大きな漢和辞典に記されている。
  漢詩の文字配列は 平(ひょう)音2字と仄(そく)音2字が対で使用されている。
5.押韻について
  押韻は 同じグループの漢字を用いることを押韻と言っている。 平声は更に 上平声と下平声に分けていて、 更に15グループずつに分け、上声は 29グループ、去声は 30グループ、入声は 17グループに分けられている たとえば孟浩然の「春暁」の第1,2,4句の最後の文字は 「暁、鳥、少」で、これを漢和辞典で引いてみると、いず れも上声の「篠」グループに入っている。

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