1999年2月28日臓器移植法施行後初の脳死からの提供を受けた心臓、肝臓、腎臓の移植が行われ漸く日本に於いても臓器移植の新しい歴史が始まった。しかし残念ながら我が国における臓器提供は、欧米はもとよ近年目覚ましい発展を遂げているアジア諸国に比べ、著しく少ないのが現状である。最近では、脳死移植の影響で臓器移植がマスコミでも大きく取り上げられ、臓器移植という言葉は殆どの方が知っている。しかし、術後の移植者の状態はあまり報道されておらず、自分自身が提供した結果について思い浮かべる事は難しい。死後に臓器を提供する行為は、自分に対して見返りを望まない人間愛に基づく究極のボランティア。臓器提供を一般の方々に理解していただき、更に一歩進んで提供の意志を残していただくためには、実際に移植医療の素晴らしさを感じていただく事が大切である。心臓移植者が100Mを11秒台で全力疾走する姿、肝臓や腎臓移植者が元気に力一杯走り、飛ぶ姿を一般の方々は想像出来るだろうか。彼らがもし移植を受けていなかったら殆どが亡くなっている。その意味から移植者スポーツ大会は端的に移植医療の素晴らしさを語ってくれる。一昨年8月行われました第13回世界移植者スポーツ大会では、世界48カ国と地域から800名以上の移植者が参加し、我が国初めての大会が神戸で行われた。この模様は、多くのマスメディアを通じて広く報道され、一般の方々の移植医療に対する理解を深め、移植医療理解推進に少なからず貢献したと感じている。
今年秋田県能代市で行われる、第12回全国移植者スポーツ大会も今年の北海道大会同様、アジア、オセアニアから有力選手を20名程招聘し、国際交流を図っていきたいと考えている。例年日本移植者協議会ではスポーツ大会を行うために活動を続けてきているが、今秋田大会では地元能代市の青年を中心に実行委員会を組織し、スポーツ大会だけではなくその大会を核イベントとして、大会までの間を「臓器移植理解啓発期間」と位置づけ様々なイベントと啓発活動を展開する為に準備を進めている。例えば1,中学校、高等学校等で腎移植体験談を交えた講演を行い理解を深めてもらう。2,Gift of Life(移植を受けた子供達の作品展)を開催し、各施設等で展示して理解を深める。3,劇を作成しビジュアルから理解をしてもらえる公演活動を展開する。4,移植コーディネーター、医師と共に座談会等を開催し理解を深めてもらう。その他理解啓発に役立つイベントを全県展開する。この一連の働きが成功したと言えるようになるためには、どれだけの一般の皆様に参加していただけるかが課題になると考えている。多くの人々が関わり、そして移植者と交流する場を提供してこそ成功と言えると考えている。1年間を通した活動の中でボランティアとしての関わりを構築出来るかが課題である。県民の皆様のご協力をお願いしていきたいと考えている。
このスポーツ大会の成功が終着点ではなく、ひとつの盛り上がりの通過点として認識し、今後移植医療が広まる為の活動を継続して展開していきたい。
最後になりますが、私たちは臓器提供をお願いしている活動ではなく、あくまでも移植医療というものを理解して頂き、家族の中で話し合って頂く機会を作って欲しいと願っています。理解した上で、答えはそれぞれのお考えで良いと思うのです。一度正面から考えて欲しいと願います。
日本移植者協議会 秋田県支部
秋田移植の会 会長 村越 正道