「オレは怒ってるんだぁ!」since 2000/06/01

特集!回顧録「あの人は今」

last updated 2002/01/11

どうしているやら・・・

Page 3


久しぶりに・・・
高校を出て、それぞれ違う道に進んだ私たちであったが、たまには電話がくることもあったし、忘れた頃に年賀状が届いたりすることもあった。しかし、年月は過ぎ、お互い30歳を過ぎた頃、それは起きた。突然の電話である。昔、彼女がファンだった外国人アーティストで、以前、日本公演をしようと来日。しかし、マリファナ不法所持のため、水際で国外退去を命ぜられた、超有名人、その人の再来日公演の頃の話である。「じゃんくす君(もちろん仮名)、お久しぶり!Hです。覚えてますか?」「ああ、久しぶりだね。どうしたの?」「実は○○が来日するでしょ?その公演チケットがあるんだけど、買ってくれない?武道館なんだけど・・・」「え?!・・・その日は行けないなぁ。誰か行くヤツがいないかあたってみるよ」「じゃ、お願いします」という会話だった。翌日、その返事を聞こうという電話があった。しかし、私もあちこちあたってダメだったことを伝えると「そう・・・しょうがないね」と言いつつ、「ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど、夜、電話して良い?」
夜の電話
その夜、電話が鳴る。彼女からだった。背景をちと説明すると、私はその頃、新婚だったわけで、電話の近くに女房もいたのであった。・・・で、電話の内容はというと・・・。かつて大ファンだった超有名アーティストP氏は、とんでもないヤツだと。一言で言ってしまうと、なんて単純な話なのかと思うだろうが、これを電話で2時間説明された私の身になってもらいたい。しかも“とんでもない加減”がすばらしい!P氏は、いろんな手段を使って、常に私(彼女のこと)を監視している・・・という話である。いくら鈍感な私でも「こりゃ、電波来てるな」と思ってしまうのであった。まあ、適当にあしらって・・・と言えば聞こえは悪いが、具体的にこうすればいいんじゃない?とか、どこそこに相談すれば?とかそれなりに相談に乗っていたわけで。。。しかも、驚いたことに彼女は結婚していたのである。だったら、ご主人に相談したら良いだろう、とも言ったが、それはとっくにやったらしい。で、ご主人はどういう行動に出たかと言うと・・・数度の引越し(彼女談)だそうだ。
連日連夜
それからは毎日・・・そう、4日間ぐらいだろうか・・・毎日2時間ぐらい電話で話をした。話題は“その話”ばかりである。最初のうちはちゃんと付き合っていた私も、とうとう「そんなに大変なら警察に言った方が良いよ」と突き放してしまった。新婚家庭に連夜の電話には、さすがの女房も目がつり上がっていたし、何より私自身が彼女の話に付き合うことに疲れていた。・・・そう言って突き放した私に対し、彼女は別段、落胆した様子も見せず、最後に「私ね、今、紅茶に凝ってるんだ。じゃんくす君(仮名・・・しつこい?)、コーヒーと紅茶、どっちが好き?」ここで紅茶と答えると、また話が長くなると思い、すかさず「コーヒー!!!」と答えてしまった。「そう・・・。でも、紅茶もおいしいよ。今度、お薦めの紅茶、送ってあげる」「あ、そう。ありがとう。待ってるよ」と言って、電話を切った。それきり電話は来なくなった。
どうしているのだろう・・・
数日後、本当に紅茶が送られてきた。私の知らないパッケージは、本当に凝っているだろうことを物語っていた。って、私が見たこと無いってだけで、凝ってるとは言えないけどね。・・・どこか心の病に罹っているであろう彼女が不憫ではあった。予備知識の無い私は“紅茶を送る”と言ったことさえ、忘れているだろうと思っていた。しかし、現実に目の前にある紅茶を手にしながら、ますますわからなくなっていた。彼女の言ったこと・・・延べ数時間に及ぶ“あの話”は現実なのだろうか、それとも彼女の病気から来る言動なのだろうか?・・・私は、紅茶の御礼も言えないまま、10年を過ごして来た。ふと、彼女を思い出すのは、こちらにいた頃に彼女にかかわった人達が、今でもここに住んでいて、その人達と私が街で出会う時である。彼女が実の父親だと思っている人の実の娘さんとは、よく会う。その人は某スーパーに勤めていて、私はそこに買い物に行く機会が多いからである。その人とたまに会話することがある。「彼女、どうしてますかね?」「んー・・・最近は電話も来ないから、わからないね。連絡がなければ無いで気になるよね」なんて言われて、私もいろんなことを思い出すわけである。
んー・・・
果たして、彼女は病気だったのだろうか?今、どこでどうしているのだろうか?・・・年末、かつてP氏といっしょに活動していたG氏がこの世を去った。そして、私はまた彼女を思い出すのであった。
・・・おわり

ページ2に戻る

トップページに戻る