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             KT88 and Large Power Tubes Universal STC  - GT Shape -
   
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本来なら、本格的にSPの製作に取り掛かっているはずだった7月、
「情熱の真空管アンプ」を読み返し、憑き物に憑かれたのは前章に書いた通りなんですが、
もちろんこの時は「6AH4GT全段差動ppアンプ」を作るつもりでいました。
ぺるけ様曰く、「〜優れた音が得られる素性の良い球のほとんどは三極管〜」
「〜プッシュプル回路はシングル回路が宿命的に抱えている弱点を克服〜」とのことで、
わくわくしながら回路図から発注する部品を拾っていました。

そんなある時「ちょっと待てよ」と思います。
確かに6BM8(三極五極複合管)で超三結の音は聴いた。で、驚いた。
マイナス定電流アンプでビーム管、五極管の音を聴いた。で、納得した。
でも「ちょっと待てよ」と思います。
この程度じゃ、まだまだ「多極管の音はこれこれこうで…」なんて
語るに足るだけの聴き込みをしたことにはならないでしょう。
いや、別に語る気は無いんですが。

もう少し、多極管で楽しんでから三極管の音を聴いてもいいんじゃないか、
ということで、全段差動アンプの部品を発注寸前の土壇場で、
宇多様の「KT88 and large tube amp」を作らせて頂くことになりました。
しかも、全部GT管で揃えたらカッコイイアンプになるぞ、なんて魔が差したりしつつ…。

宇多様も、初段、帰還管は取っ替え引っ換えで試行錯誤したと仰っています。
もちろん知識の有る方が行うのと、素人が行うのでは雲泥の差があるのは承知です。
が、「当たって砕けろ」です。
ここらでひとつ、当たって砕けて見事散ってみせるのも、初心者の芸のうちでしょう。

製作過程(03/16更新)へ< GO! >

 

トランスの配置をチェック

prot1.JPG 当初のレイアウトです。
トランスがでかすぎてシャーシに収まらず、電源トランスを縦に配置してみました。
この配置でも問題無いだろうと考えていたのですが、ふと、「情熱の真空管アンプ」の一節が頭を過ります。
出力トランスは電源トランスのハムを拾うというものです。
この漏洩磁束のテストの仕方も説明されています。
未だ初心者とはいえ、基本を疎かにする訳にはいきません。
早速「情熱本」を頼りにテストしてみましょう。 
ck01.JPGck02.JPGck03.JPGck04.JPG


上記がノイズの聞こえる配置でした。
当初の配置ですと、見事に「ブーン」というノイズが聞こえます。いやー、テストして良かった!
初心者にとっては「転ばぬ先の情熱の真空管アンプ」となりそうです。
右の2例のような配置は、実際には行わないでしょうが、ま、テストですのでいろいろ試してみました。
この配置でも、7cm以上距離を開ければノイズは聞こえなくなるようでした。

ck05.JPGck06.JPGck07.JPGck08.JPG


上記がノイズの聞こえない配置でした。
どうやら、電源トランスのバームクーヘン側(いや、渦巻き側ってことです。)が
トランス方向だとノイズが載るようですが、右端の配置の場合だけ結果が逆になるようです。
各機種によって影響はまちまちでしょうから、随時テストが必要かも知れません。

ck09.JPG
ノイズチェックをしたSPです。
黒い、小さいSPがジャンク千円の自作アンプチェック用SP。
ノイズをしっかり再生してくれました。
しかし、DS-77zではノイズが良く聞き取れません。
ジャンク品より、遥かにノイズの再生音が小さいです。
「アンプのへぼさをカバーする、良く造られたSP」なのか、単に「100Hzあたりの再生能力の劣るSP」なのか微妙なところです。
このチェックには、お使いのSPの特性を把握しておく必要がありそうです。
流石にScan-Speak様でノイズ如きを再生するのは、畏れ多くて出来ませんでした。(笑)

 

部品はこう・・・かな

Cr01.JPG

初段:6SH7GT
宇多様の「 超三結アンプの実装法考察・実装例、調整法 」
より、シャープ・カット・オフ管から選びました。
高周波増幅用五極管とのことです。
シールドに囲われ頼もしい、と言うか味気ないと言うか…。
6AU6の親戚筋らしいです。スペック的にもかなり近い数字なので、たぶん使えるだろうと。もちろん、スペックが近いということと、差し替えても動作するというのは全くの別物なのですが。
ちなみに、GT管はMT管より世代が古い為、特性的には劣るものが多いそうです。スペックで選べばMT管のようです。
 

Cr02.JPG 電圧帰還管:6SN7GT
低μ双三極管です。GT管で探せば、殆ど選択肢は無さそうです。あとは6SL7GTくらいでしょうか。
種類の多さで選べばMT管のようです。
黒塗りのプレートががっしりと頼もしそうです。
右端のは、やけにゲッターが薄くなってます。新品の筈なのに。それに酷使されたせいか、背丈も磨り減っているようです。(笑)
Cr03.JPG

主要パーツ御一行様です。
「なんでそんなにコンデンサがあるんだ?」と問われそうですが、
1)ナイジェル様の「 6EM7全段差動 」やTamamoto様の「 6GB8超三結 」より、B電源出口Cの容量470μFと940μFの違いを聴いてみよう。
2)源様の「 6GB8−SE 」より、出力段カソードCの容量470μFと940μFの違いを聴いてみよう。と思っている為です。
私には違いが分かるかどうか怪しいですが。

Cr04.JPG

シャーシの穴開けが完了しました。
このシャーシ(リードP-11)にGT管を6本並べるのは、ちょっと無理があったかもです。穴が前部に集中し、強度不足のような雰囲気です。この上に重いトランスを載せるといかにも歪みそう、と言うか、実際少し沈み込みます。
小さな穴は放熱孔です。電源トランスが大きい分発熱も大きいだろうと多めに開けたのですが、仇になったかもです。
以前、ぺるけ様の掲示板にて、シャーシ剛性の重要性を語っていたベテランの方が居られましたが、このシャーシは落第でしょう。

 

電源部はどうする?


さて、宇多様回路図には電源部が記載されていません。
365Vで80mA流せば良いらしい、としか分かりません。
宇多様製作の別電源もありますが、そこまでのものはまだ必要としません。

そこでまた「情熱の真空管アンプ」の登場です。電源部の設計の考え方も記されています。
教科書とも経典とも聖典とも呼称され、真空管アンプ自作ファンに崇められる所以でしょう。
以下は、この経典の「第3章 電源回路ベーシック」を基にしたシミュレーションです。
また、Az様の「回路学習信仰ガイド」をご参照頂き、回路波羅蜜多心経「E即是I・R I即是E/R R即是E/I」
のお題目を唱えながら読み進めますと、更に御理解が深まり浄土へ至るやも知れません。

使用電源トランスは、ノグチPMC-200M(0-250V-280V:200mA)を選択してみました。
300V〜320Vあたりのものでも良さそうですが、初心者が扱うので300V以下に抑えておこうかと。
感電してしまったら、280Vも320Vも大差は無さそうですが。(^^;


1)当初考えていた電源平滑回路です。

  手作りアンプの会の皆様の作例に倣い、+B電源出口のコンデンサが大容量です。
  えぇ、巨コンは漢の譽です。(巨コン=巨大コンデンサ:1000μF程度じゃ巨コンとは呼べないですが。)
  この時点ではトランジスタの使い方が分からなかった為、CRを数珠繋ぎのπ型フィルタです。
  それでも左右独立コンデンサ方式にしたいという野望があったりします。

                                                                  +470μF+470μF 
                                                                  |
                                                    +--51Ω--+--(Lch)
                                                    |
280V--Di--20Ω--+--24Ω--+--24Ω--+--51Ω--+--(Rch)
                         |             |             |             |
                         +100μF   +220μF    +330μF    +470μF+470μF

フィルタ効果:                    (0.231)     (0.167)     (0.032)        合計 0.00123倍 = 4.7mV(残留リプル電圧)

  経典を参照しますと、+B電源出口での4.7mVの残留リプルは、真空管の内部抵抗と出力トランスの
  巻線比によって更に減少していくようです。
  上條様ご解説によると、「rps≒1/gm2」とありますので、KT88の超三極管接続における内部抵抗は、
  1.1kΩあたりということでしょうか。また、出力トランスは1次側3kΩとして巻線比が19:1程。
  これで計算しますと、8Ω出力では、およそ0.18mAあたりの残留リプルとなりそうです。

 

2)トランジスタ・リプル・フィルタ回路 左右独立編

    経典を参考にトランジスタを使ってみたいと、源様電源部 を参照しつつ考えてみました。
  やはり左右独立コンデンサ方式にしたいなと拘ってみたりしてます。
  「 C B E 」は2SC2792です。トランジスタはどれがどうやらよく分からず、源様と同じものを使用します。
  (hFE=25)は、蝦名様規格表 を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。


                                                                +100μF
                                                                |
                                                     +-3kΩ-+        +100μF+100μF
                                                     |          |         |
                                       +--------+C      B      E+--(Lch)
                                       |
280V--Di--20Ω--+--24Ω--+--------+C      B      E+--(Rch)
                         |             |              |         |         |
                         +100μF    +220μF    +-3kΩ-+        +100μF+100μF
                                                                |
                                                                +100μF

フィルタ効果:                     (0.231)                (0.0053)          合計 0.00122倍 = 4.6mV(残留リプル電圧)

  280Vの整流直後で380Vとし、(我が家のACコンセントは105Vあるようで、280x1.3x1.05としています。)
  C-B間の電圧降下を10V、+B電源出口で360Vあたりを見込んでいます。
  hFE=25として、3.2mA程をベースに流し、片chあたり80mAを得ようというものです。

  上記の2回路について、源様よりご教示を頂く機会がありました。源様、ありがとうございました。

1)の回路について
はっきり言いますと、抵抗を使って何段ものフィルタを作るとレギュレーションが悪くなります。
過ぎたるは及ばざるが如し、です。

2)の回路について
なお、電源を左右に分けるのは、電源のインピーダンスが高いための
起こるクロストークを、小さくする目的で行います。
もし、電源インピーダンスが低いのなら、分ける必要はなく、分けても効果は非常に少ないです。
トランジスタで言えば、コレクタ・エミッタ間に適度な電圧差があれば、分ける必要は無いと考えます。

そもそも、LPレコードなどは、左右でのセパレーションは40dB程度しかありません。
ダイナミックレンジも60dB程度です。
これでも不満は感じないわけですから、考慮するところとどうでも良い所を見極めることが肝心です。

  レギュレーションとは、電源電圧の変化する比率のことらしく、
  これが悪いとは、抵抗分により出力を上げても電圧が下がることのようで、
  具体的には、瞬発的な音への反応が鈍くなったりするらしいのですが、
  初心者調べによる理解なので正確なところは定かではありません。

 

3)トランジスタ・リプル・フィルタ回路 左右共用編

  トランジスタを用いる場合は、C-B間にある程度の電圧差があれば左右独立させなくても良い、
  とのご教示を頂いたので、下記のようにしてみました。

280V--Di--20Ω--+--24Ω--+--------+C     B     E+--(OPT)
                         |             |              |        |        |
                         +100μF   +220μF     +1.6kΩ+       +100μF+100μF
                                                               |
                                                               +100μF

フィルタ効果:                    (0.231)                (0.01)             合計 0.00231倍 = 8.8mV(残留リプル電圧)

  トランジスタが一個となったので、ベースに6.4mA流してエミッタから160mAを得ようと。
  高耐圧のトランジスタはhFEが低く、また電圧降下を低く抑える為C-B間の抵抗は低くせざるを得なく、
  リプル効果もそれほど望めないようです。
  それでも出力トランスにおいて、残留リプルは0.33mVあたりとなり、悪くはなさそうです。
  と言うか、8Ω出力で残留リプルが0.33mAあたりなら、普通に良いアンプと言えるのかも。

 

4)トランジスタ・リプル・フィルタ回路 高安定版編

  hFEは温度変化などにより変化するとのことで、経典には変動を抑える工夫をした回路も説明されています。
  B-GND間に抵抗を入れ、ブリーダー電流を流すとのことです。
  でも左右共用式だと、とてもブリーダー電流を流すだけの余裕はありません。
  と言う訳で、クロストークの為でなく、残留リプル対策の為に、再びトランジスタを2個用いてみました。
  ブリーダー電流を流す為の苦肉の策って奴ですか。
  こういう工夫の仕方もありですよね。ってダメなんでしょうか。

                                                              +100μF
                                                              |
                                                              +-120kΩ--GND
                                                     +1.6kΩ+          +100μF+100μF
                                                     |          |         |
                                      +--------+C       B      E+--(Lch)
                                      |
280V--Di--20Ω--+--24Ω--+--------+C       B      E+--(Rch)
                         |             |             |          |         |
                         +100μF    +220μF    +1.6kΩ+         +100μF+100μF
                                                              +-120kΩ--GND
                                                              |
                                                              +100μF

  経典には「ベース電流とブリーダ電流の比率が大きい程、hFEの影響を受け難い。」とありますが、
  どの程度の比率で流せば、どの程度抑えられるのか判断出来ず、ぺるけ様掲示板にて質問させて
  頂いたところ、茄子様より以下のご回答を頂きました。茄子様、ありがとうございました。

リプル回路のブリーダ電流とベース電圧の変化について図8a/図8b付近の条件で
hFEが10%変化する場合を例に大雑把な計算をすると、
ベース電流の20%をブリーダー電流にするとブリーダー無しの約8割に、50%で約7割、
100%で約5割、150%で約1/4、200%で約2割、500%で約1割にベース電圧の変化が抑えられる様です。

  また、ぺるけ様より以下のご回答を頂きました。ぺるけ様、ありがとうございました。

ブリーダ電流がゼロだと、リプルフィルタ回路で生じる電圧降下の度合いは
hFEの値の変化そのままの影響を受けてしまいますが、
少しでも流してやることでその影響度合いは徐々に減ってくるでしょう?

五分五分であればかなり効果あるといえますね。もちろん、5倍以上流してやれば申し分ないですが、
今度はコレクタ〜ベース間に入れる抵抗値が小さくなってしまって、フィルタ効果が激減です。
真空管アンプのB電源電圧はそもそもアバウトなところがあるので、
五分五分も流してやれば十分だと思います。

ひとつの例をとして、2SC3425は25℃の時のhFEが約50です(手持ちのが実測でそれくらい)。
B電流に150mA流すような場合、ベース電流は3mAですね。
ブリーダー電流をゼロにして、単純にコレクタ〜ベース間に3kΩの抵抗を入れたとします。
この時の電圧降下は3mA×3kΩ=9Vです。

さて、この2SC3425のhFEですが、温度が100℃まで上昇した場合でおおよそ70くらいに上昇します。
この時のベース電流は2.1mAですから、電圧降下は6.3Vになります。
B電圧からみたら、その差たったの2.7Vです。
ということは、これくらいの変動を許容するのであればブリーダーはいらないのです。

こういうケースで考えなければならないのは、リプルフィルタの上流のB電源に含まれるリプ電圧の大きさです。
残留リプルがピーク値で±6V以上存在すると、フィルタがリプルを吸収しきれなくて
きたないハムが出てしまいます。
hFEが上昇して、コレクタ〜エミッタ間電圧が低下しても、リプルの振幅を割らないような設計が必要です。

  この回路の整流効果は左右共用編と同じですが、120kΩの抵抗でベース電流と同量の3.2mAを
  ブリーダー電流として流そうというものです。
  ぺるけ様のご教示を基に考えてみますと、2SC3425のhFEが50から70へと、およそ1.4倍変化することから、
  2SC2792の場合は、hFEが25から35へと変化しそうです。2)左右独立編の回路で考えてみると、
  ベース電流が3.2mAから2.3mAと変化し、電圧降下は9.6Vから6.9Vへと変化し、その差たったの2.7Vです。
  あれ、ぺるけ様の例題と同じ答えですね。
   この電圧降下で7Vを切る状態は、源様の教えの「C-E間の適度な電圧」の点でも、ぺるけ様の教えの
  「C-E間の電圧が低下してもリプルの振幅を割らない」という点でも、微妙に拙そうな気がします。

  上條様のご解説によると、「超3極管接続は内部抵抗が極めて低くなるため、電源電圧のわずかな変動でも
  V2のプレート電流が大きく変化します。」と、あります。しかし「V2の動作点を安定化するための
  DC帰還ループを持つ自己バイアス方式とした方が回路を簡単にできます。」ともあり、
  宇多様の回路もDCループ機能を持っていますので、3V位の差は考えなくても良いのかな、なんて思います。
  余裕があったらブリーダー抵抗を入れよう、というスタンスで行こうかな。

  ちなみに4)高安定版編ですと、ベース電流が3.2mAから2.3mAと変化し電圧降下は5.1Vから3.7Vへと変化し、
  その差は1.4Vとなるようです。茄子様のご教示の通り、およそ半分の変動になっています。
  もしや茄子様は、このように手間を掛けて計算してご教示下さったのでしょうか。
  改めて御礼申し上げます。お陰様で、どのように計算すれば良いか、少しは理解することが出来ました。
  しかし、このC-B間の電圧降下では効果を望めそうにありません。没案となりますかねぇ。

  ぺるけ様の「低歪み実験アンプ」の電源部を参照してみますと、下記のようになっています。
  実にすっきりと小容量コンデンサで纏め、しかも左右独立とさせていらっしゃいます。
  しかもフィルタ効果は0.00049倍と、更に一桁少ない数値を達成なさっているようです。
  正しく経典に相応しい曼荼羅模様となっております。
  ご説明を読みますと、絶妙のバランスの上に成り立っている回路のようです。

                                                                         +47μF
                                                                         |
                                                         +--470Ω--+--(Lch)
                                                         |
250V--Di--22Ω--+--------+C     B     E+--470Ω--+--(Rch)
                         |             |         |                       |
                         +100μF    +4.7kΩ+                       +47μF
                                                +560kΩ---GND
                                                |           
                                                +47μF

  ならばこの回路を参考にしたいところですが、電圧降下の都合上出来そうにありません。
  320Vあたりの電源トランスを用意しないと困難のようです。
  どうやら280Vタップの電源トランスを選択した時点で、私は負け犬になる運命にあったようです。
  ぺるけ様の回路を参考に製作なさる方は、320Vの電源トランスを鷲摑みにし「親父、これ呉れ!」
  と、叫んだほうが幸せになれそうな予感がするかもしれません。
  でも、匠の技で成り立っている回路のバランスが崩れ、不幸が訪れる予感もしないではありません。



5)ダーリントン接続?

  トランジスタを二段重ねとしてhFEを激増させる方法もあるようです。
  詳しくはこちらを。いや、あまり詳しくはないかもです。(^^;
  どうやらhFEの25が625程になるようですが、余裕を持たせてhFE=400として計算してみます。

                                       +-----C      B      E+--(OPT)
                                       |                  |        |
280V--Di--20Ω--+------- +C      B      E+       +100μF+100μF
                         |             |         |     
                         +100μF   +13kΩ-+      
                                                 +470kΩ--GND
                                                 |
                                                 +100μF

フィルタ効果:                               (0.0012)                        合計 0.00123倍 = 4.7mV(残留リプル電圧)

  C-B間の電圧降下を16V、13kΩで1.2mA流し、ベースへ0.4mA、ブリーダー抵抗で0.8mA流そうと。
  茄子様の教えより、ベース電流の2倍ブリーダー電流を流し、変動を約2割に抑え良い塩梅かなと。
  でも、電圧の変動も1.4倍x1.4倍で2倍程になりそうな気がします。
  他にも何か、落し穴が潜んでいるかもしれません。
  ダーリントン接続を試すには、半導体の専門書でも読んで、もっとお勉強が必要のようです。
  今回は、この方式は保留ということで。

 

6)チョークトランス投入!

  チョークトランスは、ノグチ・PCM-115H(1H/150mA/DCR 27Ω)です。
  選定理由は、お安い(\945)、電圧降下が少ない(2V強)、小さい、と三拍子揃っている為です。
  このチョークは許容電流が150mAであり、KT88-STCアンプが必要とする160mAを賄いきれません。
  ですので2個投入し、片chあたり80mAとし、またもや左右独立方式となります。
  う〜ん、いいんでしょうか、こんな使い方をして。

                                                       +100μF
                                                       |
                                  +-110kΩ--GND
                               +100μF    +2.4kΩ+       +100μF+100μF
                               |              |        |        |
                +--1H----+--------+C     B     E+--(Lch)
                |       
280V--Di--+--1H----+--------+C     B     E+--(Rch)
                |              |              |        |        |
               +100μF      +100μF    +2.4kΩ+       +100μF+100μF
                                  +-110kΩ--GND
                                                       |
                                                      +100μF

フィルタ効果:             (0.025)              (0.0066)                   合計 0.000165倍 = 0.6mV(残留リプル電圧)

  おぉ!チョークトランス、侮れません。玩具のようなチョークでも、効果は絶大のようです。
  しかもブリーダー抵抗にベース電流と同量のブリーダー電流を流す余裕もあります。
  チョークでの電圧降下が少ない分、C-B間の電圧降下を15Vとし、6.4mA流してみました。
  電圧変動など気にせず、ブリーダー抵抗無しとすれば、C-B間の抵抗値は4.7kΩとなり、
  フィルタ効果は0.000085倍=0.3mAとなり、どうやらチョークとトランジスタの組合せが最強のようです。

  しかしこのチョークはコイルが剥き出しのバンド型の為、漏洩磁束の影響が大きいかも知れません。
  他にも、発熱や振動、唸りなど、実装の際には考慮すべき点があるようです。
  小さなP-11のシャーシ内に無理矢理収めても、ハムノイズを拾う可能性が高そうです。
  この方式で製作するには、もっと大きなシャーシに変えた方が無難かも知れません。

  以上のトランジスタ回路では、エミッタ側に200μFの容量のコンデンサを繋げていますが、
  どうやら200μFだと突入電流の心配があるようです。が、突入電流の何たるかについては、
  未だはっきりとは理解出来ていません。
  源様の電源回路では、Eに220μFを繋げておられますが、これはチョークトランスの直流抵抗分が
  緩衝材の役目を果たしている為なのかも知れません。

7)どうせなら別電源方式にする?

  さて、負け犬も最後のもう一踏ん張りをしてみましょう。
  と言っても、御覧の通り極めて単純にして正統派の、王道ともいえる回路です。
  チョークトランスは、ノグチ・PCM-1030H(10H/300mA/DCR 81Ω)です。
  

                                              +470μF+470μF
                                              |
                                +--41Ω--+--(Lch)
                                |
280V--Di--+---10H---+--41Ω--+--(Rch)
                |                |             |
                +100μF       +100μF   +470μF+470μF
                                   
フィルタ効果:               (0.0025)   (0.04)                                合計 0.0001倍 = 0.4mV(残留リプル電圧)

  この数値を見ていると、改めてチョークトランスの偉大さに気付きます。
  初心者こそチョークトランスを用い、「良いアンプ」製作に励むべきのような気がしてきます。
  その為にはメーカー様のお手頃価格のチョークトランスの充実が必要でしょうが。

  あまりの効果に、思わず左右独立コンデンサ方式復活です。ついでに巨コンも復活です。
  えぇ、えぇ、巨コンは漢の譽です。
  これなら巨コン、あ、いや、道祖神信仰の信者様も御満足頂けるでしょう。
  いっそのこと、電源トランスとチョークトランスを別シャーシで仕立て、
  350V前後の+B電圧を必要とする真空管アンプで使い回したら、費用対効果も高いかなーと。
  このチョークトランスは、P-11のシャーシ上には載るスペースがもはや無いですし。

 

8)そして迷走は続く・・・

  7)のチョークコンデンサ方式に至り、「もうこれで十分だろ。ってか過剰品質?これで決定だ!」
  と思われた次期主力真空管アンプKT88 & Large Power Tubes Universal STC -GT Shape-電源部ですが、
  この程度のリプル対策じゃ、まだまだなのかも知れません。
  源様の電源部のフィルタ効果は0.000025倍、小川様のフィルタ効果は0.000035倍となっており、
  更に一桁低い数値となっています。
  何故でしょう?
  通常の真空管アンプでは出力段から電圧増幅段に電源を渡す際、CRフィルタで更に整流をしてリプル
  分を取り去っていますが、超三結の場合は出力段と電圧帰還(増幅)段が直結の為、電源部で増幅段
  の分のリプルも除去しておく必要があるのかも知れません。
  自作道も奥が深いです。ってか深すぎます・・・。未だ迷い道くねくねです。

…も1回やり直し?


*注1:    「なんじゃこりゃ?」という方は「情熱の真空管アンプ」を合わせて御参照下さいませ。     *
*注2: コンデンサの左右独立方式については、無線と実験2003年1月号・発展型6B4Gシングル・ *
*       パワーアンプの製作と検証 第2回 黒川達夫 様の連載より参考にさせて頂きました    *
*注3:   上記は全て机上の計算ですので、実際の製作ではカット&トライが必要となりそうです。   *
*注4:  この設計には、勘違い、計算違い、錯覚、妄想、が含まれている可能性が高いかもです。  *
*注5: ですので間違いや修正すべき点に気付かれた方は是非ご教示をお願い致します。 m(_ _)m *
*注6:畏れ多くも全段差動ppアンプの経典を手に超三極管接続信仰に奔る私は異端の徒ですか。*
*注7:  転びバテレンならぬ転びマニアルが、再び差動の教えに縋るその日は、未だ遠いような。  *


 


と言う訳で、以下は「製作記」などという真っ当な代物ではありませんです。
素人が、自作世界の片隅で、造ってみたいと足掻いてみせた
ノンフィクション・ドキュメンタリー(爆)
ってことで、取扱注意でよろしくです。

Cr05.JPG

 
まずは信号部の配線から行いました。例によってパーツが二段重ねになる為です。
相変わらず配線材が見苦しく畝っています。進歩の跡が見られません。
って、そういや昨年の四月、マイナス給電アンプ以来の球アンプ製作なんですね。
殆ど一年ぶりとなれば、こりゃ進歩どころか、退化していて当然だわ。

宇多様の回路との違いは、

○初段ソケットの3番、5番ピンを繋いでいます。
 当初、6SH7GTをターゲットに考えていましたが、途中で「6SJ7GTあたりは?」と気付き、調べてみました。
 6SH7GTの3番ピンはKとG3へ、5番ピンはKへ繋がり、
 6SJ7GTの3番ピンはg3へ、5番ピンはKへ繋がっているようです。
 3番と5番を繋ぐと、6SH7GTの場合はKが二重に接続される形になり、これでも大丈夫なのか、
 ぺるけ様の掲示板にて質問したところ、「多分OK」とのご回答を得たので試してみることにします。
○出力段SG電圧の切替スイッチが付いていません。
 Hポジションで使用する真空管は、今の私には殆ど無縁のような気がしますので。
○初段保護回路が付いていません。
 「初段故障時の保護」より、球種が異なる為電圧がどうなるか分からないので、とりあえず省略を。

回路図に表れない細かなポイントとしては、

○ヒーターバイアスを忘れずに。
 PMC-200Mのヒーター巻線は3Aなので、片chで一巻ずつ使用し、それぞれをカソードと繋げても良い
 と思いますが、今回は電圧帰還管と出力管で一巻ずつ、左右初段で一巻使用しました。
 これは将来への伏線って奴ですが、伏線が活かされる事無く物語が終わるのも、よくある事です。(^^;
 この左右初段の巻線は、果して片chのカソードに繋げて良いものかどうか判断出来ず、
 一先ずアースに落としています。
○初段の1番ピンはシールドに繋がっていますので、アースに落とします。
○出力段カソード抵抗の、アースへの落とし所は何処だろう?
 またもやアースで悩み始めます。結局、経典の「第12章 アース回路・負帰還ループ」の教えを拠り所に、
 P-KNFBでの信号ループを最短距離で、と初段カソード抵抗のアースと同じポイントへ。
 全く、これは致命的な勘違いって奴かもしれません。
 後で、上條様の6BM8超三極管接続の実装図でもこのように配線されていることに気付きました。
 んー、大丈夫でしょう、たぶん。
 自作1号機の際には、毎日のように拝見していたのに、もう記憶に無くなっています。頭悪いっす、俺。 
○スパーク・キラーは電源トランスの0-100V間に付けています。
 ぺるけ様の掲示板にて話題となりましたが、この取付方が推奨される様です。
 詳しくは、岡谷電機産業さんのご説明をどうぞ。

 


電源部はこうする!

 

このHPに目を通して下さった茄子様より、電源部について再びご教示を頂きました。
茄子様、ありがとうございました。

                                   トランジスタ・リプル・フィルタ回路への多段フィルターの応用
                                      in <-+--C E--> out   in <-+-----C E--> out
                                          R1 B              R2     B
                                           +---+     =>       +--R3--+     R2,R3=R1/2
                                              C1            C2     C3
                                              |               |       |
                                              ~              ~       ~

とすると、3)トランジスタ・リプル・フィルタ回路 左右共用編の
1.6KΩ/100μFが800Ω/100μF2段になって0.01倍から大凡0.0004倍程度になる計算になります。
cf.私のアンプ設計マニュアル 39.電源の設計その4 (リプル・フィルタ回路の基礎/後編)

おぉ!このような方法もあるのですね。しかも、効果グンバツ!(死語)
更に、

目標値の明確化
残留リプル電圧、B電圧の変動範囲と平滑回路に許容される電圧降下の最大値を
先ず数値として明確にされては如何でしょうか。
特に後2者は電灯線電圧変動も加味して設定される方が良いかと思います。

とのアドバイスも頂きました。でも、すみません。
全てを計算の上で取り掛かれる程、賢くありませんです。未だ面目無さ過ぎの初心者です。
他にも、

6)チョークトランス投入!について
チョークトランス-トランジスタ・リプル・フィルタだと、平滑直後のリプルがチョークに直接掛かりますが、
トランジスタ・リプル・フィルタ-チョークトランスにすると殆どリプルがない状態ですから、
チョークトランスからの漏洩磁束やうなりは気にならなくなるかと思います。
但し、チョークトランスが電磁誘導を受けてリプルを増やさない様に気をつける必要はあるかと思いますが。

てっきり、チョーク・トランスで平滑してからトランジスタへ渡すものだと思っていましたが、
このような方法もあるのですね。勉強になりました。


さて、これらのご教示を踏まえた上で、再度電源部回路を検討してみます。
折角、茄子様より効果的な方法をご教示頂いたので、既に加工済みのシャーシを活用すべく、
チョークトランスの使用を断念し、トランジスタ・リプルフィルタ回路とします。

280V--Di--+----+-C       B       E-+--50Ω--+--Lch
                |       |           |             |            |
             100μ  820Ω       |             |         100μ+100μ
                        |           |             |
                       +-820Ω-+            +--50Ω--+--Rch
                        |           |                          |
                      100μ     100μ                    100μ+100μ

フィルタ効果:  (0.019)    (0.019)                       合計0.00036倍=1.4mV(残留リプル電圧)

○経典の教えに従えば、この200μFのコンデンサはリプル・フィルタではなく、信号ループの為のものです。
○源様より、トランジスタを使用なら左右に分ける必要は少ない旨のアドバイスを頂いていたのですが、
 左右独立コンデンサ方式は、TU-879(改)の頃からの悲願となっています。(^^;
 同じく、TU-879(改)の際に用意したATOM君100μFも四個、一年の永きに渡り我が家で惰眠を貪ったままです。
 何れも、今試さなければ次回は未定状態ですので、源様、ご了承下さいませ。

「こんな感じだな。」と考えていたところ、このページを目に留めたWat!様より以下のご教示を頂きました。
他にも、トランジスタに関する多大な情報とアドバイスを頂きました。
Wat!様、ありがとうございました。

3.STCの場合、最後の(OPTと接続する)コンデンサをアースではなく、KT88のカソードに
接続するとリップルは少なくなり、音的にも有利になるはずです。
http://www.ne.jp/asahi/evo/amp/6bm8z/report.htm
   ↑
上條さんのページはとても素晴らしいですね。
技術的にとてもアイディアに富んでいて信頼感もあるので、最近よく勉強させてもらっています。

突入電流については、

つまりは、C4,C5が充電されるまで、EmitterからC4に向けて、非常に大きな電流が流れ、
定格を超えてしまうということですね。解決方法は3つあります。

(1)定格の非常に大きなトランジスタを使用する
(2)R4,R5を挿入することで、突入電流を抑制する
(3)2*PI*R2*C2、および、2*PI*R3*C3で表される時定数を大きくし、
   Baseにかかる電圧が急激に大きくならないようにコントロールする

(1)は素子が若干高価になり、大きくなりますが、特に副作用はないでしょう
(2)はクロストークが良くなるという副次効果がありますが、
あまりやりすぎるとレギュレーション低下という副作用も発生します。
(3)はリップルも小さくなり、メリットは大きいですが、コンデンサが大型になるので、場所をとります。

以上のバランスで決めればよいでしょう。
私なら、トランジスタを大型にして安心感を得た上で、R4,R5に100〜数100Ωとし、
C2,C3は目標リップル値で決めます。

なるほど!R4,R5とは、エミッタ後の50Ωですが、この部分の抵抗値を大きくし、突入電流を抑制するんですね。
これを50Ωとしたのは、電圧降下を少なく抑えることを考えていたのですが、
プレートへの供給電圧が多少下がったところで、出力が若干下がるくらいで、私の耳には無問題でしょう。
この部分は100Ωにさせて頂きます。

そして+B出口のコンデンサも、出力段カソードへ直結しちゃいましょう。
我が家のアンプを顧みれば、6BM8超三結アンプもマイナス給電アンプも、どちらもカソードへ直結方式です。
KT88超三結アンプだけ仲間外れにする訳にはいきません。
って、そんな理由でなく、ぺるけ様曰くの「信号ループの最短化」の為です。
これで200μFのコンデンサは、信号ループの為の存在となりました。

果して、フィルタ効果0.00036倍、残留リプル電圧1.4mAで、良いのか悪いのか、
などと悩んでいると、ATOM君40μFが寂しげに転がっているのが目に留まります。
「え〜い、ついでだ。これも使っとけ。」と、ダメ押しのフィルタを組み込みました。

以下が、最終の電源部回路です。

                                                      +--100Ω--Rch
                                                      |  
                                                      |               +--------------------------------4.7kΩ
280V--Di-+-+-----+-C        B        E-+--100Ω--+----+-----+---Lch(OPT)---+             |
               |  |         |            |                            |       |         |                       P             |
280V--Di-+  |       820Ω        |                          40μ   100μ   100μ                  SG-------+---+
                  |         |            |                            |       |         |                       K             |     |
                  |         +-820Ω-+                            |       +-----+--------------+           100μ  |
                  |         |            |                            |                                         |              |     |
               100μ   100μ      100μ                          |                                      820Ω          |   30kΩ
                  |         |            |                            |                                         |              |     |
CT---------+-----+-------+-----------------+-------------------------+--------+---+---GND

フィルタ効果:     (0.019)     (0.019)                   (0.286)            合計0.0001倍=0.4mV(残留リプル電圧)

○組立途中で、この40μFはリプル・フィルタではなく、信号ループ用として機能しているかも知れない?
 と気付くのですが、その実態は未だ不明だったりします。(^^;

○届いた2SC2794を計測したところ、hFE=18程でした。また、C-B間の電圧降下は15Vを見込みます。
 160mA必要ですので160mA÷18=8.9mAで、ベースへ凡そ9mA流す為の抵抗値が15V÷0.009A=1666.7Ωで、
 これを2本に分け820Ωとしました。

○予定電圧は、
 ダイオード整流直後で、379V=280V*1.3*1.04 :1.04を掛けているのは、コンセント電圧が104Vある為です。
 トランジスタのベース部分で、364V
 エミッタからの抵抗100Ωの部分で、356V=364V-(0.080A*100Ω)
 出力段プレート電圧が、340V=356V-(0.080A*200Ω) :200Ωは出力トランスの抵抗分です。
 宇多様の回路より10V程プレート電圧が低めですが、この通りになったらお慰みって奴ですね。

それにしてもこの電源回路、多くの先達の方々のアドバイスを頂きながら、
巡り捲って辿り着いたその回路は、ぺるけ様の「低歪み実験アンプ」と同じ構成になりました。
「だったら、最初からコピーしてれば?」って話もありますが、足掛け2年(笑)に渡る今回の製作のお陰で
電気の「で」の字くらいは理解出来たような気がしてみたり。

 

 

Cr10.JPG

 

ATOM君、目立ち過ぎってか、図体でかすぎです。狭いシャーシ内部が更に手狭になってしましました。
お陰で、どうレイアウトを検討しても、内部にトランジスタを収容するスペースを確保出来ませんでした。
結果的には、「トランジスタは外に、大き目の放熱板とともに配置する。」ことの正当性を実感しました。
それと、球アンプが「ストーブ」と揶揄される所以も。

○コンデンサ類を吊るす為、コの字のアルミ材を桟のように渡しています。
 これで真空管や電源トランスの発熱源から離すつもりでしたが、ご覧の通り密集状態で効果薄。

○信号部の配線の段階で、ソケットへの配線やアース線などを組み込んでおく必要が有ります。
 指も鏝先も入る余裕が無いです。トラブルの際にバラす時のことを考えたら、もう・・・。
 ん?マイナス給電アンプを製作している時もこうだったような・・・全く進歩がありません。

○この40μFのコンデンサは、どこでアースに落とすのだろう?
 またしてもアースが行く手を遮ります。当初、ダメ押しのリプル・フィルタのつもりで入れた40μFですが、
 出力段の信号ループを考えていた時、「あれ?超三結回路には初段の信号ループが無い?」
 なんて、愚かな考えを持ってしまいました。経典に則り、初段信号ループらしきものを妄想していくと、
 プレートから出力トランスへ至り、200μFをすっ飛ばして40μFからアースへ潜り、初段カソードへ還る
 ような気がしてきます。んー、実際のところはどうなのでしょう?不明です。
 ひとまず「ループ優先」と、初段カソードと同じポイントでアースに落としてみました。
 この40μF、実は要のデカップリング・コンデンサなのかもしれません。が、不明です。(って、こればっかり)

 

Cr09.JPG

 

ひとまず完成し各部電圧を計っていたところ、出力段SG電圧が低く、280V程しかありません。
他の箇所の電圧はほぼ想定通りで、「どこかにミスが?」と、ぺるけ様の掲示板にて質問させて頂いたところ、

このアンプがシングルアンプであり、KT88のプレート電流が150mA以下であるならば、
スクリーン電圧は300Vもある必要はありません。250Vでも高すぎるくらいです。
今のまま(282V)でかまわないと思います。

スクリーン電流は球によってものすごばらつくので、マニュアルデータはあんまりあてになりません。
しかも、信号がはいって動作するとこれまた大きく変動します。なので、抵抗1本でドロップには向かないんです。
12Vくらいのツェナダイオードを適当な本数直列にしてドロップ抵抗がわりにする、という手もよく使われます。

とのご回答を頂きました。
確かに源様やWat!様の作例ではツェナーを用いているのですが、その必要性に気付かずにいました。

またDaluhmann様より、

半導体を混ぜることに抵抗がなければ、エミッタフォロワで固定してしまうという手もあります。
ベース基準電位はそれこそ抵抗分圧でいいでしょう。当然、コレクタはB電源に接続。
石の耐圧は、+B〜SGの電位差に対して十分なものを。
ただSGは一般に若干の抵抗を入れることが推奨されていますので、
エミッタ直結ではなく100〜数百Ωの抵抗は入れておく方がいいと思います。

とのご回答を頂きました。
成程、小川様の作例は、そのように電圧を安定させるのが目的だったのですね。
ようやく理解することが出来ました。しかしそれを実践するだけの知識が未だ及びません。
次回の部品発注の際にはツェナーダイオードを注文し、SG-B電圧間に入れて試してみましょう。

○他にも、抵抗器の発熱量が凄まじく、シャーシ内部がサウナ状態になります。
 出力段カソードの抵抗820Ω10Wを20Wへ、SG周りの3W抵抗を5Wに交換しました。
 幾分は改善されましたが、長時間の稼動は厳しいものがあるようです。
 いっそカソード抵抗はメタルクラッドにして、シャーシ外に出した方が安心かも。

○更に恐ろしいことに、整流ダイオード直後の820Ωから電源投入の一瞬だけ「ほわっ」と、
 煙が立ち昇ることに気付きました。何かとんでもない出来事がこの抵抗に起きているようです。
 これは1Wのものを3Wに交換してみたところ、煙は出ていません。
 流石、素人が無理矢理組み上げたアンプは、恐ろしくデンジャラスなものとなってしまいました。(^^;

 

Cr08.JPG

 

多くの先達の方々のご教示を得つつ、ようやく完成させることが出来ました。
アドバイスを下さった皆様、誠にありがとうございました。
昨年の七月に部品を集めて以来、八ヶ月を費やしての製作となりました。時間掛かり過ぎです。
ま、途中でDAC方面に取り憑かれたのが一番の理由なんですが。
完成したKT88超三結アンプを眺めての印象は、「やはり無理矢理詰め込んだ感が漂うなー。」でした。
このP-11(30cm/18cm)のシャーシにGT管六本は、厳しいものがあります。

○トランジスタの2SC2792&放熱板は、ここしか空きスペースが無いので電源トランスの前に設置です。
 放熱板は当初、TO3P用の3cmx3cmのものを用意していたのですが、源様より、

リップル・フィルターで注意することは、意外とTRあるいはFETの温度が上がることです。
計算では大した消費電力ではなくても、実際に動作させると熱いのに驚きます。
ヒートシンクは大き目とした方が良いと思います。大は小を兼ねる、です。

 とのアドバイスを頂き、「でかすぎ?」と思いつつ、7cmx5cmのものを用意したのですが、
 結果的に、この程度の大きさは必要と実感しました。
 小さな放熱板でシャーシ内に組み込んでいたら、頭痛のタネが増えていたことでしょう。
 源様、アドバイスをありがとうございました。

○このアンプはKT88,EL34,6L6系を使用できるユニバーサル・アンプですが、出力管を交換する度に
 シャーシを裏返し調整するのが面倒なので、ピンジャックと半固定抵抗は表面に出してみました。
 出力段カソードを定電流化し、Wat!様のマイナス給電アンプよろしく「無調整」で動作させたり、
 かずさん様のレポートよろしく「音質の追求」などしてみたいのですが、その段階に至るには、
 幾多の試練が待ち構えていそうで、まだまだ修行が必要のようです。

○初段の3番、5番ピンを繋ぎ、6SH7と6SJ7の挿し替え可能としていますが、どちらを挿しても、
 問題無く動作しているようです。音の違いは、まだよく分かりません。(^^;

 

Cr11.JPG

 

Cr13.JPG

Cr12.JPG 

< P-11二兄弟之図 >

兄貴分のマイナス給電アンプとツーショット。
んー、二兄弟、語呂が良くありません。
やはり三兄弟でなくちゃイカンでしょ。
って、次もシャーシはP-11なのか!?
小さなシャーシは懲り懲りって言ってるのに。

今回、多くのアドバイスを頂いたWat!様の
マイナス給電アンプも、バージョン・アップが
成されている様です。

外観こそシンプルですが、シャーシ内では
P-K帰還の他に、P-G帰還も新たに加わり、
マイナス給電やらカソード定電流化やら
信号ループCのカソード直結やらツェナーの
投入やら、私にもっと知識があったら
とても勉強になる回路のアンプです。

それでいて無調整で球の挿し替えが可能で
お手軽に楽しめると言う、実に素敵なアンプ
なんですが、一息ついたら早速私も
改装してみましょう。

 

まずは問題なく稼動しているKT88・STC
アンプですが、JK1EYP様の「PCL86全段差動
を拝見しますと、聴感上は問題なく良い音
に聴こえても、実際には発振している場合が
あるようです。
回路自体は宇多様のものと同じですが、初段
や電圧帰還管は別の球種を使用しています。
最適な動作とは言えないでしょう。
どうやら測定器も持たずに弄ってみるのには、
限界がありそうです。

初心者が、ちょっと背伸びをして電源部なぞ
拵えてみましたが、それはそれで楽しかったり
勉強になったり、得るものは大きかった
のですが、次からはまた先達の皆様の作例を
コピーさせて頂きながら、お勉強です。

勿論次こそぺるけ様の全段差動ppアンプですが、
三段増幅回路検討のアナウンスがあったきり
暫しの沈黙が続いています。
「情熱の真空管アンプ」を最初から読み直し
ながら、その日に備えておきましょうか。

 

  05年03月完成 

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