校庭の松が危ない(中間報告)

最終更新1999/5/23

このページは能代高校のホームページではありません。1999年に勤務していた教員が作成したページです。


この話は平成11年のことであり、夏までには回復しました。


99/5/22
 本校の校歌に「松陵健児」と歌われているように、本校のシンボルは松である。その松が4月以降枯れ始めた。そこで、5月1日にこの「校庭の松が危ない」のページを掲載した。
 5月15日頃からは花粉が盛んに飛び散り、元気な木と枯れ始めた松の木との違いがはっきりしてきた。新芽?の勢いが増してきたためか、最近は枯れ方のスピードが鈍ってきたように感じられている。松の木の下に駐車している私の車のガラスも黄緑に染まっている。
 このページをご覧になった方から連絡があり、5月20日に秋田県山本農林事務所の係官が本校の松の診断に来てくださった。その時のお話では、校庭を観察したところ、葉が枯れているのは剪定している前庭やテニスコート脇の松にだけ見られ、剪定していない陸上競技場の周りの松には見られないことから、松くい虫などの害虫によるものとは思われない。また周囲をコンクリートで囲んだ中の松が枯れている。これらから考えると、前年夏に剪定した枝の傷から菌が入り込んだために起こった葉ふるい病の疑いがある。また、この冬の大雪の影響で地下水位が上がったために根ぐされを起こしている可能性がある。枯れ方のスピードが鈍ってきているようなので、このまま様子を見てはどうかというお話でした。また、係官の方々も時々巡回してくださるということでした。人間の健康診断の場合の「経過観察」にあたるのでしょう。

松(5/21現在)

5月21日の松の様子。(5月1日の写真と同じ木を写す)下左の写真は手前の枯れた木の枝を拡大した写真。枯れた葉のすぐ隣には生き生きとした葉も見える。下右の写真は後ろの健全な木の枝を拡大したもの)

枯れた松の拡大図(5/21日)  隣にある元気な松の拡大写真(5/21)


99/5/1 4月29日付の地元紙「北羽新報」紙に「民家の松が危ない」「枯れ木現象目立つ」「原因不明 被害の拡大を懸念」の見出しで、民家の庭木の松が枯れるという記事が出ている。能代のある造園士の話では「松の木がぼつぼつと枯れ、枯れた部分がだんだん広がってくる」「茶色になった葉はおろか小枝の部分まで枯れてしまった部分が1本の木のあちこちに散見され、同じ症状が手入れをしている松ほどよく見られるという。原因がどうもはっきりしない」という。
 また、秋田市の樹木医の話も紹介しているが、「県内で新種の松の病気が出ているという話は聞いたことがない。おそらく十種類ほどある松くい虫の一種ではないか」と言っているという。
 そこで、今日、5月1日に写した本校の校庭の松を見ると下の4枚の写真のようにこの新聞記事そのものだ。上右は上左の部分拡大写真だ。下の2枚はいずれもテニスコート側。枯れている枝のある木がところどころにある。後ろに見える家はいつもの下宿屋さんだ。 

 本校の松の手入れをしてくれている方にうかがったら、松がこうなったのはつい最近のことだという。中国では酸性雨のために松が枯れているというから、これも酸性雨の影響ではないかという。12日から18日頃まで降った雨が原因ではないのか、しかも樹勢の弱い木に枯れが目立つという。そういわれてみると、私が本校に来たのが4月1日。その日さっそく校内を回ってホームページ用の写真を撮った。その時には松の枯れは気にならなかった。また数日後に校庭の記念碑の写真を撮ったときにも気がつかなかった。酸性雨の影響かどうかを調べる方法がわかればいいのだが。

  

 


葉ふるい病 (林業技術センターから送られてきた資料による 出典は不明 解説者は作山健の署名がある)

 春にマツの針葉(前年葉)が褐変落葉する病気で、マツ類の苗木から成木まで発生するが、特に寒冷地のアカマツ、クロマツ床替苗に被害が著しく、1苗畑で20万本の苗木が全滅した例もある。本病はLophodermium pinastri(Schrad.) Chev.という糸状菌の一種によっておこる(最近、病原性の強い真の葉ふるい病菌は L.seditiosum Minter et al. であるとの説が有力になってきた)。
 春4月頃褐変した前年生針葉は次第に灰褐色〜灰白色に変わり5〜6月に落葉する。病針葉上には5〜6月頃0.5mm大の灰黒色、だ円形のやや盛上がった菌体(精子器)が形成され、6月中旬頃からは黒色だ円形(約1×0.4mm)の盛上がった菌体(子のう盤)を形成する。成熟子のう盤には糸状の子のう胞子が形成され、最盛期は7〜9月である。子のう胞子は降雨後に空中を飛散しマツ健全針葉に伝染する。当年葉上の初期病斑は黄斑として11月頃から現れ、そのまま越冬し、翌年進展して褐変症状となる。冬季間寒風を受ける場所ではいっそう被害が助長される。
 発生苗畑では7〜9月にマンネブ剤(500倍)を4〜5回散布する。成木では薬剤防除の必要はなく、施肥や根元周りの耕うんなど樹勢の回復に務める。(作山 健)

松くい虫被害とは (全国林業改良普及協会発行のパンフレットによる)

 松林を枯らす悪のコンビ−病原体・マツノザイセンチュウと運び屋・マツノマダラカミキリ
 風害等の気象害、ツチクラゲ菌、マツバノタマバエ等の病虫害など、松林の被害にもいろいろありますが、現在日本各地で見られる異常な松枯れ被害の真犯人は、体長1mmにも満たない小さな線虫、マツノザイセンチュウです。線虫は自分では移動できないのですが、その線虫を健全な松に媒介し、被害をまん延させているのが体長3cm程度の運び屋・マツノマダラカミキリなのです。

松枯れのメカニズム
 1 枯れた松の材の中で越冬したマツノマダラカミキリは、春から初夏にかけて蛹になり羽化して成虫になります。そのときマツノザイセンチュウはカミキリの体に乗り移り、線虫を抱えたカミキリは直径1cm程の穴を開けて外へ飛び出していきます。
 2 カミキリは5月から7月頃にかけて、健全な松から松へと飛びまわり、松の若枝の樹皮を食べます。
 3 そのとき、カミキリの体内に潜入していた線虫は、カミキリの食べた樹皮の傷口から松の材の中に侵入、急激な生理異常をもたらし、松を枯らしてしまいます。
 4 そしてカミキリは、この線虫によって衰弱した松の木を探し出して樹皮にかみ傷を作り、そこに排卵管を差し込んで卵を産み付けます。
 5 卵からふ化したカミキリの幼虫は、樹皮の下で柔らかい皮を食べながら成長し、夏の終わり頃から秋の間に成長した幼虫は、材に深く穴を開けその中で越冬します。そしてまた1へとつながっていきます。 

(松の病気を農林水産省のホームページなどで調べましたが適当なものが見あたりませんでしたので、秋田県山本農林事務所からいただいた資料をもとに自分で作りました。詳しく掲載されているホームページがありましたら教えていただければ幸いです)