「戦後日本における、家父長制度が否定され、個人主義的価値観が普及していく流れの中で、住宅の個室化が急速に進み、プライバシーを過剰に重視する建築の形が家族という一つのコミュニティーの在り方を不健全なものにしているのではないかという疑問。
その事について、建物を過剰に個室化している壁が、人の気配や人と人とが顔を見て対話する心のエネルギーを衰退させ、現代人に心の個室化をもたらしている事、また、そういった空間が家族の絆を希薄にしている要因になっているのではないか。」
という視点で問題提起がされた。
また、「住環境の快適化を追求し続ける建築業界において、シックハウス対策の不徹底や介護のための十分なスペースを確保しきれていない現状、健康対策や、住宅そのものを福祉とするバリアフリー的な配慮に対する取組みについて、今後も改善していく余地があるのではないか」
という指摘もされ、より健やかな生活を営むための建築の在り方ととともに、健全なコミュニティーを育てていくための、建築が担う役割についての可能性が提示された。
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