喜久水の蔵人と酒タンク 2003年12月20日(土曜日)
朝6時半に目覚めた。部屋の窓が真っ白に曇っており、空気が冷たかった。今年の能代は暖冬の影響で、ほとんど積雪がなかったのに、今朝は一面の銀世界になっている。
今日は蔵元「喜久水」へ行く日。「醸蒸多知(かむたち)修行」と呼ばれる酒造り体験制度の初日だ。集合は朝8時半。ブーツの紐を硬く締め、外へ出ると、吐く息は真っ白に凍った。降りしきる淡雪の中、積もったばかりの新雪を踏みしめて蔵へと急いだ。
今日は第1号タンクの仕込みの最後の工程が終了する日。朝から蔵人が忙しく働いていた。
コートの雪を払って蔵へ入ると、酒の甘い香りがほんのりと漂う。蔵人に声をかけられた。
「雪も一緒につれてきたな。」う〜ん。雨女ならぬ雪女かも。

お酒は「一・麹、二・もと(酒母)、三・造り」
みなさんご存知のように、日本酒の主原料は「米・米麹(こうじ)・水」。でも、造り方を知っている方は少ないですよね。簡単に言えば、米を蒸して麹を作り、その麹に酵母と水、さらに蒸したお米を加えて発酵させるとお酒ができます。
その最初の段階、米麹を作ることを「製麹(せいきく)」と言いますが、蒸米に黄麹菌(「もやし」と呼ぶ)をふりかけて作ります。麹菌が蒸米に繁殖すると、米麹ができあがります。右写真は米麹を揉みほぐしているところです。温度・湿度を適度に保っている部屋は蒸し暑く、上着を脱いでの作業です。
麹室(こうじむろ)での作業

お米が蒸しあがったぞ! 午前中の作業、続いては蒸米(むしまい)。巨大な甑(こしき)から濛々と立ち昇る蒸気。能代産の酒米「華吹雪(はなふぶき)」が約1時間かけて蒸しあがった。蔵人が手分けして米を専用容器に移し変え、重量を測る。(左写真)
この米の一部は「米麹」となる。蔵人の中でも「麹屋」と呼ばれる麹造りの専門家・伊藤さんが種麹をふりかけ(右写真)、高階杜氏が手で温度をみる。息の合った流れ作業で、またたく間に台車2台分の蒸米は室に運び込まれた。
麹屋の伊藤さん

それから少し経つと、急に蔵の中が慌しくなった。第1号タンクの仕込みが最後の工程(留添え)に入ったのだ。(三段仕込み:原料を3回に分けて酒母タンクに入れる造り方。それぞれを初添え・仲添え・留添えと言う。)
身の丈よりずっと大きな巨大タンクに管を設置し、風圧によって先ほど蒸しあげた酒米を送り込む。すごい音だ。蔵の階段を上がり、上からタンクの写真を撮った(右写真)。タンクを取り囲んで作業をする蔵人の足場は、地上から1.5階くらいの高さになるだろうか。3人の蔵人のいる狭い足場へ降りて行くと、「櫂(かい)棒」を手渡された。約2.5m・木製でずしりと重い。これで水と米をよく混ぜ合わせるわけだ。私を含めて4人で櫂を入れることに。酒造り初挑戦です。
タンクの酒に櫂入れする蔵人
 
櫂入れのお手伝い「重いよ〜」 「えっさ、ほいさ」の掛け声に合わせて、四人で調子を整え、櫂を入れる。タンクの底に櫂の当たる音が、静かな蔵の中で鐘のように響いた。不思議なことに、誰にも教わらなくても、自然に蔵人の呼吸が分かってくる。
最初は余裕でかき混ぜていた私。しかし、掛米が入るにつれて、どんどん櫂が重くなってきた。蔵人のペースは一向に落ちない。両腕に力を込めた。
「美味しいお酒になりますように…」そう思った。
作業を終了すると「疲れたろう」と声をかけられた。酒造りは一つ一つが重労働。機械に頼らず、すべてを人間の手で造っていた時代もあるのだから、昔の蔵人の苦労は計り知れない。

午前中の作業を無事終えて、昼食を皆でいただいた。喜久水の醸蒸多知修行の特徴の一つは、杜氏・蔵人と「同じ釜の飯を食べる」ということ。これは喜久水酒造社長・平澤氏のポリシーだ。私は能代市内に住んでいるので、蔵へ通えるけれど、県外の参加者は、一週間蔵人と共に、ここに泊って酒造りを体験している。一般の方も多く参加しているので、お酒に興味のある方にはぜひおすすめしたい。たぶん一生に一度、ここでしかできない貴重な体験になると思う。
右写真は今回お世話になった高階杜氏(下中央)はじめ蔵人の皆さん。上左から2人目は喜久水7代目喜一郎さん。
杜氏・蔵人のみなさん
次回は1月6日・高階杜氏の本領発揮!純米吟醸の仕込み

1/6大吟醸手とぎ1/8雪のトンネル1/13東北初「遠心分離機」で新酒初しぼり
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今回の取材にあたり、快く現場を見せてくださった平澤社長はじめ社員の皆様、
ご指導くださった高階杜氏・蔵人の皆様、本当にありがとうございました(金谷)

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