電脳中心・開店準備中

電脳中心店員:「おや、今日は早いですね。まだ開店前ですよ」
ゲームキッズ:「ちょっとね。用事が早く済んじゃったんだ」
電脳中心店員:「また何かの悪巧みですか」
ゲームキッズ:「人聞き悪いこと言わないでくれる。駆け引きだよ、駆け引き。
         こういうの作るのもタダじゃないんだ。ちょっとくらい、いい目見させて貰ってもバチはあたらないと思うな」
電脳中心店員:「あれだけ法外な値段をふっかけておいてですか」
ゲームキッズ:「ふっかけてるのは俺じゃないよ、じいさんさ。俺はそのうちの何割か貰ってるだけだからね」
電脳中心店員:「大して変わらないと思いますよ」
ゲームキッズ:「変わる変わる。…あれ、張魯はまだ?」
電脳中心店員:「だから、まだ開店前なんですよ。君が早すぎるんです」
ゲームキッズ:「そうだっけね。…………なぁ、最近張魯、変じゃないか」
電脳中心店員:「いつものように、そっちの隅のゲームがクリアできなくていらついてますよ」
ゲームキッズ:「ちがうんだ。そんなじゃない。もっと違う何かだよ」
電脳中心店員:「と、言うと?」
ゲームキッズ:「俺も、よくは解らないんだ。けど、なにか。大きな力だよ。それは解るんだ」
電脳中心店員:「ちから、ですか。…なんなら、待ってみたらどうです。彼のことだ。もうすぐ来るとは思いますよ」
ゲームキッズ:「そうしたいのは山々なんだけどね。これの改造、まだ完全じゃないし、それに、ちょっと呼ばれてるんだ」
電脳中心店員:「彼に?」
ゲームキッズ:「そう。だから、今日はハイスコア更新ならず!!」
電脳中心店員:「張魯がやるかも知れませんよ」
ゲームキッズ:「あいつにはまだ無理だよ。スティックの捌きがまだ甘いんだ。
         当たり判定もしっかりとは覚えてないみたいだしね。
         タマがどのくらいの早さなのか、とか、自機のスピードとの互換とかね」
電脳中心店員:「そこまで考えてプレイしてるのは君くらいでしょう」
ゲームキッズ:「かもね。…あ、そうそう、あっちの筐体ね、判定がちょっと甘すぎるんだ。変えて貰える」
電脳中心店員:「ディップスイッチくらい自分でやって下さいよ。出来るでしょう」
ゲームキッズ:「店員の職務怠慢だよ、それ。…………なんだい、何か面白い記事、載ってる?」
電脳中心店員:「いえ、特に何も。…双子募集の公告が、1pくらい大きくなってますけどね」
ゲームキッズ:「そこまで見る人間も珍しいと思うよ」
電脳中心店員:「お互い様です」
ゲームキッズ:「…………」
電脳中心店員:「…………」
ゲームキッズ:「珍しいと言えばね、さっきスゴイ物見たよ」
電脳中心店員:「何です」
ゲームキッズ:「スコープさ、新型なんだ。俺もまだ殆ど見てないよ。それを、あんな兄ちゃんが持ってるんだ」
電脳中心店員:「あんな兄ちゃん?」
ゲームキッズ:「じいさんに引っかかったやつさ。さっきちらっと会ってきただけだけどね。
         それに、きっとあいつ、風水師さ。七宝刀持ってた。陽界から来たんだ。
         陰界にあんな空気の奴はいないからね。一目で判るよ」
電脳中心店員:「ここにも、来ますかね」
ゲームキッズ:「見たいだろ? スコープ」
電脳中心店員:「それだけでなく、その風水師も」
ゲームキッズ:「物好きだね、あんたも」
電脳中心店員:「君もでしょう」
ゲームキッズ:「あはは、そうだね」
電脳中心店員:「新型ですか。前に、君に使い方を聞かされましたね。こっちの具合がどうだの、あっちのセンサーがこうだの、と」
ゲームキッズ:「聞きたそうな顔してたからさ」
電脳中心店員:「誰がです。使いもしない物の蘊蓄を聞かされるこっちの身になって欲しいものですね」
ゲームキッズ:「好きだろ、そういう構造の事」
電脳中心店員:「君が言いたかっただけでしょう」
ゲームキッズ:「まあどうでもいいことなんだけどさ。んじゃね。俺行くから」
電脳中心店員:「宜しく伝えといて下さいよ」
ゲームキッズ:「わかった」
電脳中心店員:「張魯は? どうするんです」
ゲームキッズ:「…あの兄ちゃんに任してみるよ。面白くなりそうだ」
電脳中心店員:「そういう考えで良いんですか」
ゲームキッズ:「悪くは転ばないと思う。そう、思わせるんだ、あの人」
電脳中心店員:「ですかね」
ゲームキッズ:「それに、なんかあったらきっと言われるし」
電脳中心店員:「なるほど」
ゲームキッズ:「そんじゃ。そっちの筐体、直しといてくれよ!」



那沓さん作。
いやぁ、店員さんがいい味出してますネ(笑)。
陰界の住人の中では、割とまともそうな店員さんでしたが、
新聞ちぇっくが趣味とは、やはり陰界人!!(笑)
キッズとのやりとりがテンポがよくて、いっつもこんな会話をしてそうです。
「くすくす、面白かった〜〜!!」の感想に尽きますね!
(初出:妄想遊戯出版社)


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