誰かが誰かを殺している、毎日!
[1]
「酷ぇな」
鑑識官は小さく呟くと、それきり黙ったまま自分の仕事を始めた。
久遠はコートのポケットに両手を突っ込んで、少し後ろから作業の様子をじっと見つめていた。漆黒のロングコートは「本物」のレザーであるが「天然」ではない。火星に限らず、動物の毛皮を使った製品はそれ専用にクローニングされた動物を使っている。
「月日子、今回もアレですか?」
開けていた釦を締めながら、白い吐息と共にグラウエンが尋ねてきた。久遠とは対照的に、いかにも暖かそうな生成り色のダッフルコートを着ており、襟元にはマフラーまで巻かれている。
辺境区では、空調が十分に行き届いていない。鑑識員達もすぐ動かなくなる指先に息を吹きかけながら作業を進めていた。だが久遠もグラウエンもそうはしなかった。連盟の捜査官たるものそんなことは、ましてやカチカチと歯の根をならすような無様なマネはできないのである。
「何もこんな寒いところでヤらなくてもいいのに……」
「グラウエン」
久遠に抑揚の無い声で名を呼ばれ、グラウエンは肩をすくめた。
「はぁい。わかりました、ぼやくのは止めますよ〜ぅだ。……ったく月日子は少し厳しすぎますよ。ルナシティーの稚羽流星や佐屋破魔子なんかは、俺よりずっとおちゃらけてるってハナシじゃないですか。あ、佐屋って確か月日子の後輩でしたっけ?」
「久遠捜査官、ちょっとお願いします」
話し続ける年下の同僚を無視し、久遠は鑑識の方へ歩みを進める。
「第一、コンビ組んで6年になるのに、どうして未だ名前を呼んでくれないんです? 俺はちゃんと月日子って呼んでるのに……」
久遠の無視を更に無視し、グラウエンは喋り続けた。寒いと口が動きづらくなりそうなものだが、彼はいつにもましてお喋りが酷くなっている。
「今回は?」
自分を呼んだ鑑識官に、久遠は尋ねる。
「白人女性です。年齢は二十代前半かと」
ここ二ヶ月の間に、移民街では三十件近い殺人が起きた。被害者の性別、年齢層は老若男女まんべんない。犯人は人権団体の目を気にしているのか、と毒づく週刊誌もあった程である。
「髪の色は?」
久遠の問いに、鑑識官は数瞬ためらった。現場には被害者の毛髪が幾つか散らばっていたから、問いそのものに答える事は容易である。だが……。
「うわぁ、相変わらず悲惨ッ!」
死体に掛けられたブルーシートを持ち上げて、グラウエンが叫んだ。
「美人も台無しだな。まさしくエア・ヘッド」
顔をしかめながらシートを戻す。彼の隣の鑑識官は、グラウエンの軽口にも黙々と作業を進めている。黙ったままなのは、ひょっとしたら呼吸をしたくなかったのかも知れない。
死体は頭部が……正確に言えば、脳が無かった。
連載ッス! しかし先が全然見えてないッス(爆)。
ど〜しよ〜〜〜〜〜!(自爆)
全体で50枚ぐらいを予定してますので、この調子で行けば全10回ぐらい……あくまでも予定ッス。
救いようの無い話になりそうな気配だけど……いい? いいや、書いちゃえ(笑)
完結に向けてがんばりマッスル。
華天 拝
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