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ごめんなさい、画面、大丈夫ですか?
もし像が乱れてたりしたら、それ、私せいです。 私、雨女なもので。 ホントはパソコンとかは苦手なんです。湿気が強すぎて、キーを打っても電気がパチパチ跳ねるんです。今日はまだ大丈夫みたいだけど……うう、ヤダなぁ。 普通、雨女っていうと、とにかく天気を悪くしちゃう人の事を言いますよね。でも、私の場合、違うんです。 私のまわりには、ホントに雨が降っているんです。いつも。 もう人生大変です。私のまわり、直径1メートルほどの場所はいつも雨がザァザァ降ってますから、傘とレインコートが手放せません。外にいるときだけじゃなく、建物の中でもです。私の頭の上、だいた70センチぐらいの所から、雨が降り出しているそうです。 幼稚園から高校の今まで、窓際の一番後ろの席にいます。椅子と机の下にすのこを敷いて、お父さんお手製の雨樋を使って排水しています。 制服のスカートは、膝上のミニに作りなおしました。裾が泥で汚れてしまうからです。 校長先生の許可も取ってあります。でも、コギャルに見られてしまうらしくて、街を歩くと変なおじさんに声をかけられた事もありました。……いけませんねぇ。 私が雨女なのは、実は家系なんです。お兄ちゃんは雪男でお母さんは超快晴女。この前死んだおばあちゃんは、私と同じ雨女。曾おばあちゃんは隣町にもその名を知られた「嵐を呼ぶ女」だったそうです。 名前からして相当なモンです。曾おばあちゃんが嵐子、おばあちゃんはツユ子、お母さんは美晴で私はしぐれ。一番ヒサンなのはお兄ちゃんで、つららといいます。ひらがなで、つららです。斉藤つらら。 この名前をつけたのが、唯一まともなお父さんだというんだからひどすぎます。 私とお兄ちゃんがケンカをすると、時々みぞれになります。でも必ずお母さんが仲裁に入るので、曇りになっておしまいです。 つらら兄ちゃんは、名前と体質への度重なるイジメをものともせず、去年大学を卒業して、今はジャマイカへ行っています。ボブスレーの特別コーチとして、現地の人から絶大な人気を集めているそうです。 とても暑い国ですが、バテる事なく頑張っていると、毎月手紙が来ます。グラマーで可愛い黒人の女の子達に囲まれた写真が先月届いたんですけど、みんなお兄ちゃんの男性的な魅力より、涼しさに惹かれているような気がしてなりません。 この頃、よくボランティアクラブの先生が、私のまわりをうろついています。先生の手には、海外青年協力隊の募集チラシがこれ見よがしに握られています。 ……確かに、私は雨女です。砂漠の緑化を進めている国にとっては、喉から手が出るほど欲しい人材だと思います、自分でも。種をまいた辺りを散歩してればいいんですし。 (でもそんなんでいいんでしょうか?) 雨女というと嫌われがちなイメージがありますけど、私は上手くやってると思ってます。私は雨を呼び寄せるからです。 今にも雨の降りそうな場所へ行くと、その雨はみんな私に降って来るんです。だからそこは快晴。私は土砂降りですけどね。ま、晴れ女の娘としては、面目躍如と言うところでしょうか。 この体質、結構役に立つんですよ。 屋外スポーツの部活の練習や大会には引っ張りだこです。高校総体では応援スケジュールの調整が大変で、皐月がマネージメントをしてくれています。 幼なじみの皐月は陸上部です。短距離の選手で、去年の大会では準優勝してました。授業でも運動会でも、グラウンドを思い切り走ったことのない私にとって、皐月はとても憧れます。 「しぐれ、お願いがあるんだけど」 オレンジの傘をぽんと開いて、皐月はよくこう切り出します。私と話すにはまず傘が必要なんですが、皐月は傘を開いて話しかけるそのタイミングが絶妙です。嬉しくなって、ついお願いを聞いてしまうのです。 今回の皐月のお願いは、サッカーの応援に行って欲しい、ということでした。うちの高校のサッカー部は一昨日敗退したんですけど、皐月の彼の高校が決勝戦だそうで……。 Jリーグのスカウトも見に来るというので、何が何でも晴れなければ! と皐月は力説しました。 というわけで、私はサッカーの試合を見に来たんです。皐月は陸上の表彰式があるので、まだ来てません。 スタンドの一番後ろの席で、赤い傘は勢いよく雨を弾いています。やっぱり今日は雨降りだったみたい。バチバチ音がうるさくて、応援の声もかすんで聞こえます。 一生懸命に走る選手達を見ていると、夢中になれるのはいいことだとしみじみ思ってしまいます。私は何故ここで応援しているんだろう? 私が私であること、雨女であることの意味は何だろう? と、気怠いような焦りを感じ、私の雨は一層激しく降りかかります。 気が付くと、隣に皐月が座っていました。オレンジ色の傘の下、優勝トロフィーを抱えて、試合前のように緊張した眼でグラウンドを見つめていました。 「勝つよね」 皐月が泣きそうな声で聞きました。相手のフリーキックで同点に追いつかれたところです。こんなに不安そうな皐月を初めて見ました。 「絶対勝つよね。しぐれがいるんだもの」 私は驚いて、皐月を見つめ返しました。 「気付かなかった? 時雨の来る試合、晴れるのはもちろんだけど、全部勝つんだよ。雨女ってだけじゃなくて、勝利の女神でも有名なんだよ、しぐれは」 そういえば、うちのサッカー部の試合には、新設のカバディー部と重なって行けなかったなあ、とそのことばかり考えていて、私は後の試合をほとんど見ていませんでした。 爆発するような歓声と、抱き付いてきた皐月に我に返ると、試合は二対一、彼の高校が優勝していたのです。 |
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応援していた学校の人達が、次々とグラウンドへ走り出します。私達もスタンドから飛び降りました。
皐月が彼を見付け、彼も皐月を見付けて、二人は抱き合って喜びました。私は置いてけぼりです。ぽつねんと雨の中に立っていました。 すると、ゴールキーパーがとことこと駆けて来ました。泥だらけの手袋を脱いで、大きな掌を差し出します。 「ありがとう。君が来てくれたおかげだよ」 満面の笑顔で私の手を取ると、ぶんぶんと大きく振り回しました。 「あの、濡れてます。風邪ひきますよ」 私が言うと、彼は初めて気付いたように頭上を見て、私の顔を見ました。 「暑くて死にそうだったんだ。丁度いいよ」 そうしてもう一度パッと笑いました。 瞬間、心臓に全部の血液がぎゅうと集まって、ほんの少し、雨が止みました。 |
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その後、「いろいろ」あって、私は彼とおつきあいをすることになるんですけれども、それはまた別の機会に。
赤い一つの傘の中で彼と手をつなぐと、指先から伝わる熱のせいで、雨足が少し柔らかくなります。 このまま雨が全部蒸発してしまえば、暑い国で散歩しなくてもいいかもしれないな。 そう考えると、私の唇はついニコニコと緩んでしまうんです。 私の話はこれでおしまい。 今度はあなたのことをはなしてよ。 ね? |
☆少女マンガみたいで気恥ずかしいのですが、結構お気に入りのおはなしの一つです。
友(とも)さんからイラストを強奪頂いたので、レイアウトを変えてみました。
(友さん、イラストを少し切ってしまってごめんなさい!)
ただいまオモシロ企画が絶賛進行中! 友さんのHPはこちらからどうぞ!!(2000.12.5)
☆この作品は、「楽園」の恋愛小説ランキングに参加してます。
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