| ここ数日、チェンはブリッヂでクローディアを探していた。 彼女の妙な噂をあちこちでも聞いたからだ。 幾度も回線を乗り換え、ようやく彼女をつかまえた。雑音の向こうへ、努めて冷静に言う。 「噂を聞いた。君の噂だ」 「どんな噂?」 「君がデューカだって」 「まさか」 クローディアは笑った。 「あ、でも少しは当たってるわ。あたし、SODのスタッフなの」 呆気にとられたのはチェンの方だ。受話器を持つ手に力が入らない。 「デューカは一人じゃないわ。スタッフ全員がデューカなの。彼女はスタッフ無しでは、女神とは成り得ない。そういう意味で、私もデューカよ」 「デューカは本当にいるのか?」 「いるわ。ファンの心の中に」 「そういう文学的な事じゃない。一個の人間として、デューカは存在してるのか?」 「いると言えばいる。いないと言えばいない。ネットではどちらも可能よ。デューカはここでしか生きられない。例えデューカの正体がマリアでもミツコでもシャーリーでも、デューカでいられるのはネットの中だけ」 さざ波のようなノイズが流れる。 「こういうゲーム、チェンは嫌い?」 「……君流に言えば、好きな奴もいるし、嫌いな奴もいるだろうね。確かに君らにとっては遊びだろうけど、ファンは本気なんだ。知ってるだろ、ファンがどんなにデューカを好きかって」 再びノイズが現れる。 先に接続を切ったのは、チェンだった。 |