チェンがデューカを調べ始めて、すでに一ヶ月が経っている。
 だがどんな手を尽くしても、ファンが知る程度以外は、何一つわからなかった。

 ネット内に君臨する歌姫の事は、インターネットを始めてすぐに知った。
 パソコン雑誌には毎月のように特集が組まれていたし、いろいろなチャットに参加しても、必ず彼女の名前が出た。
 しかし興味を持った理由は、その強烈なカリスマのせいだけではない。

 バイトをしていた音楽雑誌から、デューカの調査を依頼されたのだ。

 今や音楽業界もデューカに注目し始めている。
 いち早くプッシュしていけば、彼女がプロデビューした際に有利だと考えたのだろう。

 何故自分が抜擢されたのか、チェンは薄々気づいていた。

 デューカの調査は一筋縄ではいかない。
 ネットの上でしか姿を現さないのだから、違法すれすれの線で調べるしかない。
 失敗すれば、チェンはハッカーと呼ばれるだろう。バイトなら、尻尾切りにはちょうどいい。

 チェンは舌を鳴らし、ベッドにデューカのスクラップを放った。
 パソコンのスイッチを入れる。

 デューカは、彼女の「会社」でありファンクラブである『SOD』と共に、2年前スターネットに現れた。
 発表したアルバムは3枚、曲は全部で28。
 全ての曲にミュージックムービーが作られている。
 このムービーが秀逸で、動画・CG・実写ほか、あらゆる映像技法を駆使して作られ、下手な映画を見るよりも感動してしまう。

 紫の右目と水色の左目、たてがみのような金の髪。
 デューカのムービーは、曲によって容姿が全く違う。
 人種どころか動物になっていたり、人形や悪魔の扮装をしているのもあったが、
この色彩だけは、共通していた。

 ディスプレイにメニュー画面が浮かぶ。
 ネットへアクセスし、ブラウザを立ち上げ、メールチェックをする。

 チェンもファンクラブに入会した。
 曲もムービーもすぐにそろえた。
 ファンレター代わりにインタビューを申し込んでもみた。
 が、何度申し込んでも無視され続けた。(当たり前である)

 今日も、一通のメールも無かった。
 低く唸ると、首の後ろでくくった髪を解いてばさばさにかき回す。
「本職じゃねぇんだ、どうしたって無理さ」
 そう呟きはしたものの、チェンはチャットを探し始める。
 デューカのフリークが大勢いて、インタビューのはかどる所を。

 

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