例によって「スターネット」に接続し、パソコンをつけたまま電話の受話器を上げる。
(もしくはヘッドホンとマイクをパソコンにつなぐ)。
 花音から教わったキィワードを入力し、待つ事数秒。
 受話器のノイズが高音に変化したら、番号を適当にプッシュする。
 回線に誰もいなければ呼出音が続くだけ、先客がいれば万歳、楽しいおしゃべりの時間が始まる。

 違法行為に乗り気じゃなかったチェンだったが、近頃はすっかりブリッヂの常連だ。
タイピングにもたつかなくてもいいし、何よりファンへのインタビューがはかどる。

  

 少し遠くから少女の声が聞こえる。ノイズがひどくて聞き取りにくい。

「こんにちわ。チェンだ。聞こえる? 君は?」

 答えがない。

「もしもし、どうした?」
 
「よろしく。ところで君、デューカのファンかい?」
  
「そりゃラッキー。俺、ライターのバイトしてるんだ。『S☆R★S』って知ってる?」
 
「サンキュ。俺、それに記事書いてるんだ。で、今度デューカの特集組む事になったんだけど、君にインタビューしてもいいかな?」

 毎回こうしてインタビューが始まる。

 自ら言うよう、クローディアは大変なフリークで、レアな情報をよく知っていた。曰く……、

 ウェブサイトの「SOD」はたった3人で切り盛りしている。
 デューカの音域は5じゃなく6オクターブだ。
 声の割にブサイクだから人前に出ない。
 本当は男だ。

 ……などなど。
 実に楽しげな口調に、信憑性はまるでない。彼女自身もあまり信じていなさそうだ。
 噂が噂を作る都市伝説と絡めても記事にできそうだ、とチェンは考えた。

「クローディア、もしキミが近い所にいるんなら、今度オフ・ラインで会えないかな? もっと詳しくインタビューしたいんだ。友達つれてきて構わないし、もちろんお礼もする」

 受話器からはさらさらと音だけが聞こえる。

「クローディア?」
 
「俺、変質者じゃないぜ。何だったら会社に聞いてくれれば……」
 

 ざざ、と一瞬音が乱れ、高い信号音が反響する。ブリッヂに誰かが参加してきたのだ。

    
 
  
「チェンだ」
   殿 
 
   


 この後チェンは、延々3時間ものおしゃべりに付き合わされる事になる。
 (違法であるが)電話代がゼロなのがせめてもの救いだった。

 

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