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 結局、事務所に連絡した。工具セットを持ってやってきたのは、ことも
あろうにあの金髪小僧だった。事務所のじゃない、ちゃんとした普通のバ
イクでご登場だ。

「世話が焼けるなぁ。今からこんなんじゃ、明日どうやって仕事するつも
りなんだよ」

 それはこっちが知りたいよ……。奴は工具で車体のあちこちを締めたり
ゆるめたりと点検していたが、急に眉をつり上げて俺を見た。

「こいつはな、エンジンと違ってデリケートな性格なんだ。乗ってるんなら
それぐらい分かってると思ったのに、不用意に子ども達の前に出やがって」
「あっちが勝手に集まってきたんだよ」

 流石にかちんときて言い返す。明日のためにルートの下見をしてたっての
に、こんな言い方は無いだろう。けど。

「黙れ」

 一言で俺は何も言えなくなっちまった。それ程奴に気圧されてしまったん
だ。ちくしょう、俺より年下だっちゅーのに!

「いいか、ルドルフは周りの空気を感じ取る力が他のトナカイよりも優れて
る。良い空気だとどこまでも走って行くが、少しでも不安だったり何かを、
お前を信じられないようなことがあったら、途端に走れなくなっちまうんだ。
ルドルフに乗るんなら、不安にさせるような行為は絶対にするな」

 そう言われても、心当たりは全くない。つーか、まるでスクーターのこと
じゃなく本物のトナカイを扱っているかのような言葉に、俺の不安はかえっ
て募る。いや不安というよりも不可解な気持ちでいっぱいだった。

 結局ルドルフのエンジンはかからなかった。とっととバイクで走り去った
金髪小僧を恨みがましく(半ば羨ましく)見送りながら、俺はルドルフを押
して帰ることになった。

 えっちらおっちら、トナカイを押して歩いていると、

「お兄ちゃん」

 高い声。振り返ると、道路の端にあの女の子が立っていた。俺はほっとし
た。さっきからずっと気にかかっていたからだ。

「よう! 風邪はもう大丈夫か?」
「平気よ。もうすっかり良くなったの」

 女の子は笑顔を見せた。『モー娘。』に入っててもおかしくない、かわい
い笑顔だった。これでサンタを信じてるってんなら、最高のお客さんなんだ
けどなぁ。

「お兄ちゃん、今お仕事忙しい? 時間ある?」
「OKだよ、俺も話したいと思ってたんだ」

 そして俺は、女の子をルドルフに乗せて近くの公園まで押して行った。女の
子はスカートから出たハイソックスの足をぶらぶらさせながら、珍しそうにル
ドルフの角ハンドルを握っていた。


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