12/10


 その日のバイク乗りは散々だった。俺は爆裂エンジンを押さえ込むことができずに、
何度も吹っ飛ばされて、アザとすり傷をたくさんこしらえてしまった。ホントにスクー
ターなのか? 唯一の救いは、全ての傷の手当を、あの彼女がやってくれたことだろう。

 今日の彼女は、赤いタートルネックのセーターに、黒革のミニスカートといういで
たちだ。セーターの膨らんだ部分の、畝の歪み具合がまた表現のしようもないほど!!
何ィ、マニアックだと? いいんだよ、マニアックで!!

 俺が至福の時を過ごしていると、ガラリと事務室の扉が開いて、革ジャンの男が入っ
てきた。チクショウ、二人の時間を邪魔するな!

 男は俺の脇から手を伸ばして、彼女の胸の前にある薬箱から消毒薬とガーゼを取る。
ここ一番の寒さだから、トナカイバイクもエンジンの掛かりが悪いのだろう。サング
ラスの顔、右頬一杯にすり傷がついていた。

「まぁ、転倒なんて随分と久しぶりじゃなくて?」
「今年はいつもの八頭の他に、ルドルフも出るからな。プランサーだけじゃなく、他
の奴らも随分はしゃいでる」

 少し金属がかったような、低くて渋い声だった。サングラスの中からちらりと俺を
見る。ほんの少しのその仕種だけでも、十分格好いい。でもそんな奴からトナカイバ
イクの名前が出るなんて、なかなかシュールだ。

「うふふ、今年は期待しているの。ルドルフの乗り手がようやく見つかったんですもの」

 男へ、そして俺へ順番に美女は笑いかける。
 ルドルフというのが、俺のバイクの名前だ。サングラスのバイクはプランサー。み
んなサンタのトナカイにちなんだ名前がつけられている。

 何だか訳が分からないが、その笑顔は溜まらない。とにかく張り切って後半の講義
を受けた。


→12/11