12/7
訊けば今年のバイト採用は俺一人らしい。
「他の人はみんな社員なんですか?」
「ええ。正社員ですわ。今年は欠員が出てしまって
困っていたのですけれど、あなたに来て貰えてよかっ
たわ」
「欠員って、誰か辞めたんですか?」
「いわゆる寿退社ですの。本人は続けたかったそう
なんですが、奥様に反対されたとかで」
「そうなンすか?」
バイクに乗って、クリスマスにプレゼントを配る、
簡単な仕事なのに。クリスマスは家族ですごそう、と
かいうやつなのかな。
「その方、去年のお仕事でバイクから落ちてしまって、
生死の境を彷徨ったんです。奥様のお気持ちも分かり
ますわ」
オイオイ、落っこちたってどういうこったよ。ダン
プとぶつかったとか? まさかあの角ハンドルが、腹
に刺さったなんて言わねぇだろうな? 考えるだに、
全身から血の気が引いていく。夢のあるチョロい仕事
だと思ったのに、そんな落とし穴があったとは。
ふと彼女と目が合う。華やかに笑いながら、彼女は
言った。
「もしこのお仕事が気に入れば、社員になっていただ
けます?」
俺は曖昧に笑い返しながら、考えときます、と力無く
言った。
→12/8