大手商業資本の戦略A 〜日本のウォルマート、イオングループ

バブルがはじけ経済の長期低迷が続く中、消費にも新たな傾向が出てきた。人々はより安い商品を求め始めたのである。少しでも安くの傾向はいいものを選択するよりは使い捨てでもとりあえず間に合うものを、無理せずに買える物を求めた。100円ショップや食料品の99円ショップなどが全国に建ちはじめている。都会や地方都市での核家族化、一人暮らし傾向がさらに拍車をかけた。
 一般消費、日用品、食料品の分野でもこの傾向は地元商店からの消費者離れをさらに加速し、大量仕入れ大量販売での安値商品を扱うスーパーへ購買客を向かわせた。その中で頭角を現し全国展開をしている代表的企業がイオングループ、イオン、ジャスコである。ダイエーの決定的破綻が明らかになった今、対抗しうる勢力はもはや存在しないとさえいえる。
 イオングループの戦略はダイエーの失敗を横目で見ながら、その弱点を補う形で踏襲し、日本版ウォルマートの戦略へと変化しつつある。20年前、ダイエーが人口密集地の都市中心部の地価の高い地に進出し衣料、食料、雑貨から家電、耐久消費財までを扱い小デパート的に展開したのに対し、イオン(当時はジャスコの名称が多かった)はダイエーと若干商圏の重なる一歩下がった地価のそう高くない地域に食料、雑貨、衣料に限定して展開した。売り場面積を多く占め仕入れや在庫、メンテに難のある耐久消費財を扱わず、ダイエー、また地元スーパーとうまく折り合いをつけながら地元商店を次々に廃業に追い込んでいった。そして全国の中小の都市に至るまで支店網を増やし、勢力を拡大していった。
ダイエーがいなくなった今、イオンの戦略は第二期に入ったと言える。完全に車社会になった日本の実情に合わせ郊外に展開し始めた。ターゲットは資本力の少ない、また設備に劣る地元スーパーや中小資本のスーパーがターゲットになった。それまで展開していた中小の都市型ジャスコや郊外の中規模店舗を統合し、広い駐車場を完備した大規模ジャスコやイオン(格上の店舗)を作り始めた。都市部に商店街が無く小デパートダイエーが無くなった今、消費者は車で郊外のスーパーへ行かざるを得ない。
基本戦略の転換が明らかに見え始めたのはこの頃である。米国ウォルマートの商圏、人口地図戦略に良く似た展開になってきている。マイルをキロに変え、半径5km圏内、10km圏内、15km圏内、30km圏内で店舗統合と展開を見せている。能代市の場合、東に北秋田ジャスコ、南に五城目ジャスコ、そしてどちらからも30km以上はなれて展開する形になる。誘致賛成派は今能代に誘致しなければ周辺町村に出来てしまう。もっと市内の空洞化が進むと心配するが、それは杞憂である。新店舗の候補地は国道沿いの能代市の郊外で無ければならない理由がある。八竜や琴丘では五城目ジャスコと15km商圏が重なり系列同士の客の奪い合いになってしまう。二ツ井より東では北秋田店と。さらに秋田自動車道能代インター予定地からすぐのアクセス。将来に向けた布石である。
 そして、5年後、地元資本や中小スーパーが根絶したとき、仕上げの第三期に入る。巨大規模ウォルマート型ショッピングモールへの転換。既に一人勝ちの状態でどこにも対抗店はない。立ち上げる気配も無い。地方都市にある大規模店をさらに統合し、30kmから50km圏内で一つのショッピングモールを形成する。客はもうどこからも買うことは出来ない。遠くともそこに行かざるを得ない。買い物は週一回か月二回、山のような買い物をすることになる。しかし大丈夫、配送つきだ、それも小分けにして何回かに分けて希望の時間に届けてくれる。一日買い物に行き子供は併設した遊園地で遊び、食事をし、スポーツをし、そこだけにお金を落とす。週末のレジャーをかねた恒例行事となる。
 イオンはたとえ進出しても新能代市の人口が5万をきると撤退する。進出する店舗は5年で元を取る計算をしている。そのためには圏内の食料(主食以外)の7割、雑貨の8割、衣料の5割のシェアを取るつもりでいる。そのためには競合するスーパーはことごとく潰す必要があるのだ。そしてその後、現鷹巣(北秋田市)、大館の中間に県北東部巨大店舗、五城目近辺に能代、土崎、秋田北部までシェアに入れた県北巨大店舗の二店に分離統合される。秋田県は4つのイオンによって完全に消費を握られる。秋田自動車道道に沿って展開しているのも車での客を見込んでいるのではない。高い高速料金を払わなくとも時間はかからない。そこへの足としての有料定時運行バスに便利だからだ。
 今回、誘致に賛成した議員の中には、東能代地区の住民の要望と新興住宅地の住民のためのインフラ整備を理由にし、またどうせ法的には差し止めは無理なのだからという者がいたが、新興住宅地どころではない大型店の水利、交通のための過大なインフラ整備は市民に平等にかかってくる負担、労せずして立地条件のいい地に出店できるイオンは建設に一番金のかかる部分を負わなくて住む。
 しかし、その東能代地区の住民の要望は撤退時に倍の付けを払わされる結果で帰ってくる。イオンの戦略は、廃墟戦略、又は蛇戦略とも言われる。進出した地域の競合する商店、スーパーをことごとく廃墟の建物に変え、やがては己の店もより大きな店舗に移ることによって廃墟にし、周辺を廃墟に変える。また脱皮を繰り返す蛇のように、殻を脱ぎ捨てながら大きくなる。残されるのは利用できない皮(建物)と今更農地には戻せない宅地並み課税のかかる無用の土地だけだ。

2005年6月30日